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セイドレイ【完結】
第13章 独りぼっち
老婆はキョトンとした顔で亜美を見上げると、苦笑いを浮かべて返事をした。
「…ありゃありゃ、恥ずかしいねぇ。ちょっとそこでけっつまずいちゃってねぇ。家はすぐそこなんじゃが…お嬢ちゃん、ちょっと肩を貸してもらえんかのう?」
「も、もちろんです!…さ、せーのっ……はい!ゆっくりでいいですからね?よいしょっ…と」
亜美は老婆を肩に担ぎ、立ち上がる。
「歩けます…?ちょっとキツいかな…。お家、すぐそこなんですよね?家までお連れしますよ?」
「あらまあ…いいのかい?悪いねぇ~。それにしてもやさしいお嬢ちゃんだこと。本当にいいのかい?」
「はい!大丈夫ですっ!ちなみにお家は…?」
「あぁ、あそこだよ。あの瓦屋根の──」
老婆が指を指したのは、本当にあと目と鼻の先という、道路沿いにある大きな屋敷だった。
「分かりました!じゃああそこまで、もうちょっとだけ頑張りましょう!」
そしてふたりは、どうにか屋敷の玄関の前までたどりつく。
「本当に悪かったねぇ。助かったよ。もうここでいいから、お嬢ちゃん帰んなさい」
「はい。あ、でも──」
亜美は老婆のズボンの膝付近が、血で滲んでいることに気づく。
「──おばあさん、大変!血が出てますっ…。手当しなきゃ…お家には誰かいますか?」
「いいや。息子も娘もみーんな出て行っちゃって、今はこの家に私ひとりなんじゃよ。最近足腰が弱ってきて、なにをするにも億劫でねぇ」
「あの…もしよければ、ですけど。私、お家に上がらせてもらってもいいですか?とりあえず消毒して…もし骨とか折れてるといけないし…」
「まぁ!なんて心のやさしい子なんだこと。本当にいいのかい?」
「ぜひぜひ!気にしないでください!じゃあ…おじゃまさせていただきます──」
亜美は老婆の家へ上がると、救急箱からガーゼと消毒液を取り出し、傷口の手当てをする。
幸い、軽いすり傷程度で済んでいるようだった。
「これで…よし!おばあさん、終わりましたよ」
「ありがとうねぇ。とんだ迷惑かけちゃって。お嬢ちゃん、お名前はなんていうんだい?」
「あ…亜美、っていいます」
「亜美ちゃん?そうかいそうかい、可愛らしい名前だねぇ。それにびっくりするくらい、べっぴんさんだねぇ」
「いえいえそんな…あ、おばあさんのお名前は?」
「私かい?私は『トメ』。カタカナで、トメ」