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セイドレイ【完結】
第13章 独りぼっち

「トメさん…ステキなお名前ですね」

「そうかい?昔はよくあったんだよ。私ゃね、10人兄弟の末っ子で、そんでもうこれが最後です~っていう意味で『トメ』。いい加減なもんじゃろ~?」

「あはは…ていうか、すごい!トメさん、10人も兄弟がいるんですか?いいな~私なんかひとりっ子だから、兄弟がうらやましくって」

「あら、そうなのかい?でもこんなにべっぴんさんだったら、お父さんお母さんはさぞあんたが可愛くてしかたないだろうねぇ」

トメのその言葉に、亜美の表情が一瞬翳りを見せる。

偶然道で出くわしただけの老婆に、身上を話すまでもないことは分かっている。
しかし、亜美はこのときどうしてもこの老婆に話を聞いてほしい衝動に駆られたのだった。

家とも学校ともまったく無縁の、亜美のことをなにも知らない、この老婆に──。

「実は…私、今年の4月に両親を交通事故で亡くしちゃって…。それで親族に引き取られてこの街へ引っ越してきたんです…」

トメが、その深くシワが刻まれた目を丸くして驚く。

「えぇ?そりゃなんてこった…そんなことがあっていいもんか!こんなに可愛い娘さんひとり置いて…」

「私もすごくショックで…。でもがんばらなきゃ、って思ってるんですけど…新しい家にも学校にもあまり馴染めなくて。なかなかうまくいかないですね」


「 "独りぽっち" なのかい?」


「え…?」


「それじゃあ、私と一緒だねぇ」


トメは何気なく放った一言なのかもしれない。
しかし今の亜美にとって、それはほかの誰のどんな言葉よりも耳に残るものだった。


「トメさんも… "独りぼっち"?」

「そうだねぇ。9人もいた兄弟はみーんなあの世へ行ったし、息子や娘も仕事や結婚でみーんな出てった。おまけに一緒に暮らしてた長男が、去年病気で死んでねぇ」

「そう…だったんですね」

「親にとっちゃ、子どもに先に死なれることがなによりつらいことなんじゃ。長く生きてたってロクなことがありゃしない。もうねぇ、早くお迎えが来んかの~なんて、近ごろはそんなことばーっかり考えてねぇ」

「トメさん…」

「そんでも長生きしてると、こんな年寄りにもなんか意味があるんじゃないか~とも思ったりねぇ」


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