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セイドレイ【完結】
第15章 見えない敵

臓器をかき回されるような痛みに、亜美はあと少しで失神してしまいそうなところまできていた。

すると、客は唐突にバイブから手を離す。
亜美を急激な脱力感が襲い、だらんと四肢を投げだして磔台にぶら下がる。

そして──。

「──ははっ…はははっ!これはかなり素質アリと見ましたよ?さすがは新堂先生の教え子だ!」

このとき、亜美は初めて客の声を聞く。

「──気に入ってもらえましたかね?」

客にそう応えたのは──新堂だった。

「ええ、最高ですよ…!顔もカラダつきも申し分ない。しかも、この…なんというか…目を隠していても分かるんです。この女はまだちっとも──」

「──屈服していない、と?」

「そう!そうなんですっ!!いやぁ…さすが分かっていらっしゃる。この女は逸材かもしれませんよ?高い会費を払った甲斐がありました…」

「これはこれは、ありがたいお言葉。──だそうだ、亜美。お客様にほめていただいたぞ──、おや?とても返事ができる状態ではなさそうだねぇ。ククッ…」

「この女はまだ未成年のくせして、実になまめかしい。それでいて、男に対して媚態というものが一切感じられない。すでに絶望を味わっているからかもしれませんが、それにしても──まだ諦めていないというか──まだどこかに希望を抱いているように見えます」

「── "希望" ですか。なるほど」

「そうです。だからこういう女は壊しがいがありますよ。多分、ちょっとやそっとのことじゃあ堕ちない。この女の強い自我が最後まで快楽に堕ちることを拒んでいるんです。カラダはもうとっくにそれを受け入れているというのに──」

「フフ…さすがはSMの造詣が深くておいでだ。うちは "本物志向" ですから。そのへんのママゴトのような会員制クラブとは違います。うちの商品は、この女──亜美の "人生そのもの" なのです」

「人生…そのもの──」

「──ええ。ここでは一切、この女に "尊厳" などありません。仮にもしあったとしても──それは踏みにじるためにあるのですから」

「すっ…すばらしいっ…!今日さっそく、次回の予約をさせてもらいます。で…、今録画しているデータはあとからいただけるんでしたよね?」

「もちろんですとも。お望みとあればいくらでも」


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