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セイドレイ【完結】
第16章 初恋
「お前、こんなに淫乱なのにそういうとこは鈍感なんだなぁ。ていうかな、お前を嫌いな男なんかそうそうおらんぞ。体育の時間とか、男子はほとんどお前のこと見てる。特に水泳のときなんか、ありゃたまらんぞ…。男の先生たちの間でも、お前はいろんな意味で評判がいいから、俺もついうっかり自慢しそうになるんだよ」
本山の言わんとすることは、今の亜美であれば十分に理解できた。
自分に性的な視線が注がれているということについて、数ヶ月前までは気にしたことさえなかったが──今ならばそれが痛いほど身に染みている。
本山はきっと、貴之もそんな男のうちの1人であると言いたいのだろう。
しかし亜美が知りたかったのは、あの貴之の表情についてだった。
どういうとき、男が女に向けてああいった表情をするのか、その理由を知りたかったのだ。
しかし、聞いた相手が間違いだった──ということなのだろう。
「まぁな、お前が男子といることなんて滅多にないだろ?だからちょっとおもしろ半分でからかったってワケよ。好きな女がマジメに奉仕活動してると思いきや、実際には俺の子種を仕込まれてる、っていうな。変質者から守るために一緒に下校してる女は、実は中出しされ放題のド変態でしたー!っていうのがそそるだろ?俺が水野だったらトラウマもんだぜ、はは」
どこまで卑劣な男──と思ったが、この卑劣極まりない男と取引したのは、ほかでもなく自分なのだ。
亜美は怒りに震えそうになるのを、必死で押し殺した。
「あ、ちなみに今日帰りはなしだ。ちょっと都合が悪くてな。だから勝手に帰っていいぞ。ま、もし水野とハメたきゃ備品倉庫使え」
「なっ…なにを言ってるんですか!もう失礼します!…パンツ、返してください」
「お?お、おう…。ほらよ」
亜美は本山からショーツを奪い返し素早く履くと、足早に希望の棟からから立ち去った。