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セイドレイ【完結】
第16章 初恋
(あぁ…もうお昼休みあと10分しかない──)
先週のことについて、亜美は本山の言うことを100%信用する気にはなれない一方、これ以上になにかが隠されているという気もしなかった。
亜美は自分のスマホにインストールされたGPSアプリこそ見抜けていないものの──本山の行動についてはそこまで重要視することはないだろう──と、今のところはそう結論づけた。
本山は厄介な存在ではあるに違いないが、お互いに弱みを握っているということで利害が一致している部分もある。
そうなるとやはり謎なのは、新堂だ。
なぜ新堂があのとき、転校してきたばかりの貴之の名を口にしたのか──。
現実的な線として、貴之と下校するところをどこからか新堂に目撃されていた可能性がある。
亜美としては、トメの存在と本山との関係、そしてスマホを所持しているということはなんとしてでも隠し通さなければならない。
(なにが誰と、どうなっているか──)
新堂に出された "なぞなぞ" は解けないまま、亜美はひとり廊下から窓の外を眺め、残り少ない昼休憩を過ごしていた。
するとそこへ──。
「──…さん!高崎さーん!!」
(み、水野くんっ…──)
廊下の向こうから呼ぶ声がすると、貴之が手を振りながら亜美に近づいてくる。
「やっと見つけた…。高崎さん、お昼どこで食べてるんすか?どこにもいないから探しちゃって。クラスの子に聞いてもみんな知らないって言うし…」
「探してたの?私を…?」
「あ…うん。いや、そのー…ちょっとこのまえのお礼が言いたくて。ついでにお昼一緒にどうかな?って思ったんだけど、気づいたら教室にいなかったから、気になって──」
貴之はそう言うと、また髪の毛をポリポリと掻きながらはにかんで見せた。
(ダメ…そんな顔…しないで──)
ここ数日、亜美は貴之のその笑顔に取り憑かれている。
つい数分前にも、本山とセックスをする際にその顔を思い浮かべてしまった。
亜美は貴之の顔が見ていられなくなり、思わず目をそむけて窓の外を眺めた。
そして──。
「あ、あのね…?きょうは…奉仕活動、ないから……」
「…えっ?そーなの??」
「う、うん…。だから…、授業終わったらすぐ…帰れる…けど…」
(私、なにを言っているの──?)