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セイドレイ【完結】
第16章 初恋
本山は、なにか返答をしなければと焦るも、ヘタなことを言うわけにもいかず沈黙してしまう。
果たして新堂は、どこまでを知っているのだろうか──本山には新堂の真意が分からないでいた。
本山が口ごもっていると、新堂がついに核心に触れてくる。
「──ちなみに今日の昼休みは、『希望の棟』に居たようですが。さすが体育会出身だけあって、アクロバティックな生徒指導には感心しましたよ?それともあれは保健体育の個人授業かなにかですかねぇ?さすがは本山先生、教育熱心だなぁ」
本山は震え上がり、頭が真っ白になった。
亜美と一緒に居るところはおろか、校内で淫行に及んでいた現場まで見られていたとは──。
「おやおや?さっきから黙ったままですが、具合でも悪いのかね?ククッ…私が知りたいのは、君がどうやってあの高崎亜美を毒牙にかけたのか、ということなんだけどね。例えば──なにか弱みでも握った、とか?それとも、まさか君たちが愛し合ってるなんてことは──ないよねぇ?」
その口ぶりから察するに、本山と亜美がどうしてあんなことになっているかまでは知らないようである。
本山は最悪のシナリオを避けるため、一か八かの賭けに出た──。
「──た、大変…申し訳ございません。り、理由はただ…自分の下半身の赴くままにしてしまったことでございます」
「ほう?となると君は理由もなく、教え子である高崎亜美を強姦した、ということでいいのかねぇ?」
「は、はい。高崎の…カラダに目がくらみ、衝動的にしてしまったことでございます。そ、そのときに…その行為を動画に撮り、それを脅しの種にして、繰り返し行為に及んでおりましたっ…」
その供述に、新堂はあまり納得していない様子ではあるが──しかし本山にはこのとき、ふたつの確信があった。
おそらく新堂は、本山が亜美を脅すきっかけとなった動画投稿サイト「セイドレイ」の存在は知らないであろう、と。
新堂がなにより気にしているのは、闇の売春ビジネスを含めた亜美の真実について本山がどこまで知っているか、ということであるはず。
あんな闇の売春ビジネスの実態がが第三者に知られてしまうことを、新堂はなにより恐れているはずだからだ。