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セイドレイ【完結】
第16章 初恋
そしてもうひとつ。
この流れから察するに、亜美が本山との関係を新堂に暴露したわけではないようである。
本山は、「先生のことは誰にも言わない」と言った亜美を、信じることにした。
そうなれば、本山も約束を守らねばならない。
「──では先週、高崎亜美と水野貴之がともに下校していた際、あそこに君が居たのはどういうわけかね?」
「は、はい…。それは…高崎がめずらしく男子生徒と一緒に居るところを見かけまして。その…年甲斐もなく、嫉妬のような感情にかられてしまい、からかってやろうと2人のあとを尾行してしまいました…」
あくまで亜美と淫行に及んだ事実は認めつつ、「セイドレイ」の存在とスマホを買い与えたことについては口をつぐんだ本山。
「ふむ。まぁ良かろう。仮にそれがすべて真実だったとして、君の処分についてだが──」
どのみち、生徒とセックスしている現場を押さえられてしまった以上、本山の教師人生は終わったも同然かに思えたのだが──。
「──今回に限り、見逃してやる。その代わり、二度と高崎亜美に指一本触れるな。もし次にあやしい動きを見せたら、そのときは覚悟したまえ」
「えっ…??」
「分かったのならもう君に用はない。あまりマヌケなツラを見せないでくれ。こっちまでバカが移りそうだ。見苦しい。出ていけ──」
まさかの "恩赦" に、本山は理事長室を出たあともしばらく心臓がバクバクと音を立てていた。
生徒との淫行がまさか無罪放免とは──一体どういうことなのか。
とにかく新堂は、亜美のことで騒ぎ立てたくないのであろう。
新堂にとって重要なのは、あくまで本山がなにをどこまで知っているかであり、淫行の事実ではないのだ。
本山、教師人生が首の皮1枚でつながったことに安堵しつつも──このことはある意味でおそろしいと感じていた。
そうまでして新堂が慎重にならざるを得ないほど、それは危険を孕んだ売春ビジネスであるということの裏づけでもある。
本山はやはり、後悔していた。
高崎亜美という少女は、本山のような市井の男が手を出していいものではなかったのだ。
「(高崎…お前のいる世界は、一体どんなところなんだ──?)」