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セイドレイ【完結】
第17章 自由
亜美は本山への返信のあといくつか操作をして、ロックをかけたスマホを小屋の棚に置いた。
「──トメさ~ん、今朝もありがとうございます。充電はまだまだあるので、今日はそのまま小屋に置いててもらってもいいですか…?」
「そうかいそうかい。分かったよ。ところで亜美ちゃん、あの~お友だちの子…えーと…」
「水野くん…ですか?」
「あ、そうじゃそうじゃ。水野君。亜美ちゃんが嫁にいくなら、ああいう男がいいんじゃないかい?」
思いもよらぬトメの言葉に、亜美はカッと顔が熱くなる。
「なななななに言ってるんですか!?トメさん??私たち、ぜんぜんそういうんじゃ…」
「昔からねぇ、男は "気は優しくて力持ち" って言ってねぇ」
(気は優しくて…力持ち…?)
「私はこれでも、男を見る目には自信があるんじゃよ。ふふふ。でも、よかったねぇ。お友だちができて」
「…はい。ほんとに──」
そのときだった。
「──あ、亜美ー!おっ、おはよっ!」
トメの家の前で、貴之が亜美に向かって手を振っている。
「み、水野くん?おはよっ…」
「おぉ。噂をすればなんとやら…。亜美ちゃん、いってらっしゃい」
「は、はい!行ってきます──」
亜美は貴之のもとへと駆け寄り、学校に向かって歩き出した。
「亜美は毎朝こんなに早く学校行くの?」
「う、うん…。水野くんも今日は早めだね?」
「いやその…朝は亜美を見かけないから、ひょっとしたら早めに登校してんのかなって思って…つい…」
「つい?」
「なんつーか…朝も一緒に行きたいなって思って。ごめん。キモいよね、さすがに…」
「そんなこと…ないよ」
「…ほんとに?」
「うん…私もそう思ってたから…」
「えー!?ほんとに??」
そんな他愛もない会話をしながら、そろそろ校門に差し掛かるというとき──校門の前から2人の女子生徒がこちらを見ていることに気づく。
(あれ…千佳ちゃんだ。誰か待ってるのかな…)
荒垣千佳と、その友達であろうか。
できれば顔を合わせたくなかったが──亜美はすれ違いざまに小さく挨拶をしてみる。
「──おはよう」
しかし、千佳ともう1人の女子は、亜美の挨拶を "無視" した。
(あれ…?聞こえなかったのかな…?)