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セイドレイ【完結】
第17章 自由
さっきまでの笑顔から一転、亜美の表情は曇る。
実は昨夜の客が千佳の父、太蔵であったことも手伝って、余計に千佳の視線が気になったのだ。
(でもまさか…そのことがバレるなんてことはないはず──)
亜美と貴之はそのまま校門をくぐり、校舎へと向かう。
「──今の女子って…1年?なんかすんげー俺らのことガン見してたがすんだけど」
やはり、貴之も千佳たちの視線になにかを感じ取ったようだ。
「うん…。あのふたつ縛りにしてた子は…2組の荒垣さんだよ。お父さんが市議会議員なんだって」
「へぇ~。やっぱこの学園すごいな。亜美んとこはお医者さんだし。あ、そういえば… "武田クリニック" ってなってるけど…亜美の苗字って高崎だよね。院長は亜美のお父さんじゃないの?」
「あ…うん。ちょっと複雑で…。また帰りに話すね」
今日から本山の呼び出しに怯えることがなくなったものの、気が抜けない状況であることには変わりがない。
そして1日がはじまる。
貴之はさっそくクラスの男子と打ち解けている一方、亜美は基本的に誰とも会話すらせずひとりで過ごしていた。
貴之はその様子が少し気がかりだった。
教室での亜美は、ともに登下校するときとはまた違った雰囲気に感じられたのである。
そして放課後。
亜美と貴之が昇降口で靴に履き替えようとしていた、そのとき──。
「──水野君、高崎さん、ちょっといい?」
今朝、千佳と校門に立っていた女子生徒がふたりを呼び止める。
その女子の影に隠れるようにして、千佳も後ろに立っていた。
「あのさ、単刀直入に聞くんだけど。ふたりは付きあってるの?」
やや強めな口調で、女子生徒が質問してくる。
『え…?』
亜美と貴之はおどろき、互いの顔を見つめあった。
「だって一緒に帰ったりしてるよね?今朝も私たち、水野君に用があって校門で待ってたんだけど、ふたりで登校してたじゃん」
「俺に用…?」
「あ、うん。それはこれから話すんだけど、とにかく!ふたりは付きあってるの?付きあってないの?どっち??」
亜美は小さな声で、こう返答する。
「──そういうんじゃ…ないから。たまたま家が近いから一緒に帰ってただけ」
「ほんと?…千佳、付きあってないって!ほら、早く~」
すると、影に隠れていた千佳が、おそるおそる前に出てくる。