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セイドレイ【完結】
第17章 自由
「あ、あの…私、2組の荒垣千佳って言います。よかったら…水野君の連絡先…教えてほしくて…」
頬を赤らめた千佳が、スマホを片手に貴之の連絡先を知りたいと申し出た。
その表情を見たとき、亜美は千佳の気持ちを悟ってしまう。
(千佳ちゃん…水野くんのこと──)
「えーっと……」
貴之はいつもの癖で頭をポリポリと掻きながら、返答に困っているようだった。
そこへすかさず、女子生徒が割って入る。
「──もう!千佳もはっきり言わなきゃ!あのね、千佳が水野君のこと気になってるんだって!だから、そういう意味で連絡先交換したいってこと!」
「美紀っ…!ちょっと…」
先ほどから千佳の気持ちを代弁しているのは美紀という生徒らしい。
1人では心細い千佳が、美紀に協力を頼んだのであろう。
「──ごめん。俺、好きな人いるんだ。だから友だちとしてなら連絡先を交換するのは全然いいんだけど…」
貴之の返答に、千佳の表情が一瞬にして曇る。
そして亜美も動揺していた。
(水野くん…好きな人…いるの──?)
「じゃあ好きな人って誰?この学校の子?もしかして高崎さん??ねぇ??」
「美紀…もういいよ…行こ…」
詰め寄る美紀をたしなめた千佳。
その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいるようにも見える。
「だっておかしいじゃん!高崎さん、だーれとも仲良くしないクセに、なんでよりによって水野君とだけ?しかもまだ転校してきたばっかなのに。やっぱり付きあってるんでしょ?」
美紀の言葉が亜美の胸に突き刺さる。
「美紀っ!もういいからっ…行こ。部活始まっちゃうし」
そして千佳は、去りぎわになってはじめて亜美に視線を向けた。
(千佳ちゃん──)
その睨むような千佳の目つきは、まるで太蔵とのことを責められているような錯覚に陥るほどだった。
気まずい雰囲気のまま、ふたりはいつも通り下校をする。
「いやー、やっぱ女子って怖え…。なんかごめんね、亜美にとばっちりいっちゃって…」
「う、ううん…いいの。私は気にしてないから。それより──水野くん、好きな人…いるの?」
「え?あ、うん……てか、ちょっと寄ってかない?」
貴之が公園を指さした。
「…うん」
ふたりは公園に入り、ベンチに並んで座った。