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セイドレイ【完結】
第17章 自由
「──あの…さ、さっきの話なんだけど」
「うん?」
「好きな人の話」
「…うん」
「実は俺、亜美のことが気になるっていうか…」
「……」
「もっと知りたいっていうか…」
「………うん」
「わ、分かりやすく言うと…」
「…………ぅん」
「だ、大好きかも…しれないです」
「…………ウッ…ウゥッ…」
「亜美?え…?泣いてる??え、どした?大丈夫??そんなに嫌だった??あーどうしよ…そうだよな俺みたいなのに好かれてうれしいわけ…ごめん、今のは忘れて…」
あたふたする貴之の手に、亜美は自分の手をそっと重ねる。
ひんやりとして、真っ白なやわらかい手──。
「亜美…?」
「私も…水野くんのこと…知りたい。でも──」
「で、でも??」
亜美は、両親が事故で亡くなったこと、それにより武田家に引き取られてきたことなど、諸々の事情を貴之に打ち明けた。
もちろん、性的暴行を受けていることは話せるはずもなかったが──しかしそれ以外の部分については、できる限り正直に伝えた。
雅彦が非常に厳しく、ほとんど自由がないということ。
そのせいで学校でも孤立せざるを得ないこと。
そして、スマホをトメに預けてあるということ──。
「そんなことがあったなんて…。ごめん…俺、なにも知らずに自分のことばかり考えて…」
「ううん。違うの…それは全然いいの。ただ…私、こんなだから…メールや電話もできないし、デートだってできない。私なんか好きになってもきっと楽しくないと思うんだ。だから──」
「──だから?」
「た、たとえば水野くんは…千佳ちゃんとかと一緒にいたほうがいいんじゃないか、って」
亜美はやはりどこかで、千佳に負い目を感じていたのだろうか。
「そんなっ…そんなこと…言うなよ。俺は気にしないから」
「でもっ…!」
貴之が亜美の手をぎゅっと握り返す。
「だってこんなん、奇跡じゃん…。俺、モテるタイプじゃないし、今まで誰とも付きあったことないし…。今こうしてるのだって夢じゃないかって思ってる…」
「水野…くん…?」
「だからぜんぜん大丈夫。こうして朝と帰り、一緒にいられるだけでじゅうぶんだよ。それに、学校では毎日会えるし…な?」
「ほ、ほんとに…いいの?」