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セイドレイ【完結】
第17章 自由

翌朝。
亜美は入学以来初めて、学校を欠席した。
この約半年間、どれだけ睡眠不足やカラダの不調があっても休まず通い続けたが、今朝はベッドから起き上がることすらままならかった。
朝方、雅彦はすんなりと欠席を了承し、地下室の鍵を外から閉めて去っていった。
トメは今朝も庭に出ているだろうか。
貴之が心配しているかもしれない。
なんせ、きのうの今日である。
恋人同士になったその翌日に彼女が学校を欠席したら、なにかあったと思うのではないだろうか。
こんなとき貴之に連絡する手段すらないことを、亜美は心細く、そして申し訳なく思っていた。
亜美はしばらくして、再び眠った。
二度寝するなど、もう何年ぶりだろうか。
泥のように深い睡眠を貪る。
すでに心もカラダもボロボロだった。
そのころ学校では、いつも通り朝のショートタイムが行われていた。
「高崎は──朝連絡があって、体調不良で欠席、と…」
担任がそう言ったのを聞いた貴之は、亜美が心配になる。
「(体調不良…きのうはそんなふうには見えなかったけど…)」
帰りに亜美の家をたずねてみようとも考えたが──そんなことをするとかえって迷惑をかけてしまうのではないか、と躊躇する。
今どきスマホすら持たせてもらえぬ家であることから、異性交友などもってのほかだろう。
男である自分がヘタに顔を出すことで、もしかしたら亜美にペナルティが与えられてしまうかもしれない──などと、貴之なりに慎重になっていた。
しかしその後──2日経っても3日経っても亜美が登校することはなく、そのまま金曜日の放課後を迎えたのだった。
さすがになにかあったのでは──やはり様子をうかがうべきか頭を抱える貴之に、担任が声をかけてくる。
「水野、悪いんだが…月曜が提出期限の書類があってな。ちょうど高崎が休み始めたからまだ渡せてないんだ。申しわけないが、今日帰りにこの封筒を高崎の家に届けてほしい。先生から高崎の家には連絡しておくから、ポストに入れとくだけでもいい。頼めるか?」
「は、はい!もちろんっ…」
これで真っ当な理由ができた、と貴之は内心喜んでいた、
担任から連絡がいくなら、なおのこと都合がいい。
せめて家の誰かに会えれば、亜美の状況が分かるかもしれない。
貴之は担任から渡された封筒をカバンに入れ、亜美の家へと向かった。

