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セイドレイ【完結】
第18章 踏み絵
『でもあいつんち、医者だろ?金持ちが援する意味』
『それな』
『それなww』
『水野さんどーおもいますかー?』
『水野さんはオナニー中なので返信できません』
『それなwww』
好き勝手にトークを続けるクラスメイトの返信を目で追っているうちに、貴之の呼吸が乱れ始める。
──過呼吸だった。
頭は真っ白になり、なにも考えることができない。
心臓が止まってしまいそうな感覚に襲われた貴之は、発作時に飲むよう処方されている頓服を取り出し、慌ててキッチンへ向かうと、それを服用した。
「ハアッ!ハアッ!ハアッ…ハァ…──」
「た、貴之!?大丈夫??」
異変に気づいた母親が駆け寄ってくる。
「どうしたの?なにか嫌なことあった?ゆっくり、ゆっくり息を吐いて…──」
「ハアッ…ハア…──だ、大丈夫…。ごめん、ちょっと横になる…」
「そう…。最近はすっかり良くなってたと思ったのに…」
貴之は再び部屋に戻ると、ベッドに横になった。
次第に呼吸の間隔が緩やかになり、発作が治まってきたようだ。
グループトークには20件以上の通知が来ていたが、貴之はしばらくそれを見ることができなかった。
「(なんなんだよ…あの動画…。あれは本当に亜美なのか…?だとしたら、なんであんなことに…?)」
短い動画の中で、亜美──によく似た少女は醜男のペニスを受け入れ、腰を振っていた。
合意の上なのか、それとも──いや、そもそも亜美である確証はどこにもないと──そう、思いたかった。
しかし、他人の空似にしては少々無理がある。
少女だけならまだしも、あの男は──。
どのみち、確かめようもない。
まさかあの動画を亜美本人に見せて、これはあなたですか?と聞くわけにもいくまい。
貴之は考える。
仮にあの動画が本当に亜美だったとして、もしもあの家の男に性的暴行を受けているとしたら──。
「(亜美…。俺、どうすればいいんだ──?)」
『ピーンポーン』
そのとき、誰かたずねて来たのか、マンションのエントランスからチャイムが鳴らされる。
するとしばらくして、貴之の部屋のドアを母親がノックした。
「──貴之、ちょっといいかしら?」