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セイドレイ【完結】
第18章 踏み絵
「どしたの?母さん…」
「今ね、下にあんたのお友だちが来てるみたいなの。高崎さん?っていう女の子」
「…え?うそでしょ?」
「ん?本当よ…。で、きのうあんたが書類を届けたとかで、そのお礼に、って…。でも、あんたさっき発作起きたばっかだから…どうする?帰ってもらう?もし話せそうならちょっと話す…?」
まさか亜美がたずねて来るとは──よりによってなぜこのタイミングで、とは思った。
しかし、会えないならそれはそれでモヤモヤが続くことも分かっていた。
そしてどうであれ、ひとまず亜美の顔が見たい、と貴之は思うのだった。
「──ちょっと、下降りてくわ」
「大丈夫なの?」
「うん、もう治まったからさ」
貴之はマンションのエントランスへ降りていく。
先ほど動画で見た少女の姿が、嫌でも目に浮かんでくる。
貴之は首を左右に振り、短く深呼吸して、エントランスを仕切る自動ドアの前に立った。
「──お、お待たせ…」
「あ、水野くん!ご、ごめん…突然押しかけて…。今、大丈夫だった?」
「うん…。てか、亜美こそ大丈夫なの?貧血…」
「う、うん…。しっかり休んで、もうだいぶ良くなったよ。きのうは書類、わざわざ届けてくれてありがとう…」
私服姿の亜美を見るのはそれが初めてだった。
白いノースリーブのブラウスから、黒いプリーツスカートの裾がほんの少し覗いている。
ほどよい肉づきの足に穿いたニーハイソックスが、色白の太ももの絶対領域を目立たせていた。
そしてポニーテールにまとめられた髪は、普段の清純さを保ちながらも劇的に垢抜けた印象をもたらす。
制服のときにはあまり分からなった、亜美のグラマラスな体型。
小柄でありながら奇跡的なバランスとも言える肉感的なプロポーション。
貴之は目のやり場に困ってしまう。
「な、なんか…今日雰囲気違うね…」
「そ、そう??変かな…?」
「いや…めちゃくちゃ…似合ってる。めっちゃかわいい…」
貴之は動画の件を忘れて、思わず亜美に見とれていた。
「水野くん…?」
「──あ、そうだ…亜美時間ある?よかったらちょっと…デートっていうか…その…せっかくだし…」
「…うん。夕方までに帰ればいいから…大丈夫だよ?」
「お、おけ!じゃあ財布だけ取ってくるから、ちょっと待ってて!」