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セイドレイ【完結】
第18章 踏み絵
「──お、お待たせっ!どこ行こっか?俺このへん詳しくないしな…そもそもデートなんてしたことねぇし…」
「私もあんまり詳しくないんだ…どうしよっか」
「と、とりあえず、歩くか!あ…駅前になんかデパートみたいなとこあったよね?あそこ行ってみる?」
「うん…!そうしよう」
9月も中旬に差し掛かっていたものの陽射しはまだ強く、照りつける太陽が残暑の厳しさを物語る。
「今日めっちゃあっちーよな…」
「うん…」
「俺、無駄に汗かきなんだよな~ははは。てか亜美全然汗かいてねぇじゃん…」
そんな会話を交わしながら、駅前の大型ショッピングモールへたどり着いたふたり。
土曜日ということもあり、大勢の人で賑わっている。
「すげ~人…。とりあえずどうする?なんか見たいものある?」
「うーん…ちょっと喉乾いちゃった…暑かったし。なんか飲む?」
「いいね、それだ!そうしよ!」
ふたりはコーヒーショップに立ち寄り、同じドリンクを注文して席に座った。
「ちょうど空いててラッキーだったな」
「ほんとすごい人…」
亜美は若干落ち着きのない様子で周りをキョロキョロと見渡す。
「どしたの…?」
「あ、ううん…。こういうとこ来るのいつぶりだろう、って思って…。昔はママとよく来てたんだけど…引っ越してきてからほとんど外出なんてしてなかったから…」
「そう…か」
「だから…すごく…たのしいな」
亜美が微笑む。
まるでそこに花が咲いたような笑顔だった。
やはりあの動画の少女は亜美なんかじゃない──貴之はそう自分に言い聞かせる。
「──また…来ようよ。いつでも、何回でも。俺と一緒に」
「…うん。ありがとう、水野くん」
喉を潤したふたりはしばしの会話を楽しんだあと、店内を物色する。
お互いに好きなものや興味のあることについて話し、笑いあった。
貴之は、すれ違う見知らぬ男たちの視線が亜美に注がれていることに気づいていた。
ほかの男から見ても人目を引く少女なのだろう。
どうして自分などが、それほどまでに魅力的な亜美の彼氏になれたのか──貴之はやはり、未だに実感が沸かなかった。