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セイドレイ【完結】
第18章 踏み絵
「──そういや今日、外出して大丈夫だったの?おじさんが厳しくて週末もずっと勉強してるって言ってたけど…」
「あ、うん…。きのうね、水野くんが書類届けてくれたお礼を言いに行きなさいって言われたのと、たまには息抜きも必要だ、って外出していいことに…──あ、」
亜美が前方のなにかを見て、歩みを止める。
「どした??」
「あれは────」
人混みの中から、荒垣太蔵とその妻、そして娘の千佳がこちらに向かって歩いてくる。
(どうしようっ…──)
亜美は咄嗟に隠れようとするも時すでにに遅く、千佳がこちらに気づいてしまったようだ。
「──どうしたの?千佳 」
太蔵の妻が千佳の異変を察知する。
つられて太蔵も同じ方向に目をやると、そこに立っていたのは1人の少年と──。
「(──あれはっ…亜美じゃないかっ!まずい、まずいぞっ!)」
太蔵は亜美から視線を逸らしつつ、チラチラとその姿を確認する。
「お友達なの?」
なにも知らない妻が千佳に尋ねる。
「…別に。クラス違うし」
素っ気ない態度を取る千佳。
「あら、そうなの?でもちゃんと挨拶くらいしないと…あなたは議員の娘なんだから」
惰性で近づいてしまった2組が鉢合わせた。
「こんにちは~千佳のお友だち?ほら千佳、ちゃんとごあいさつしなさい」
「──うそつき」
「千佳?なにを言ってるの?」
「うそつきっ…!もう知らないっ──」
千佳はそう叫ぶと、反対方向へ走り去ってしまった。
「ちょっと!千佳!?なんなのかしらあの子…みっともない。ごめんなさいねぇ。また、千佳ともなかよくしてやってね」
妻はそう言うと、太蔵と2人で千佳を追いかけた。
「──いや~、まさかこんなとこで会うなんて」
「そ、だね…。そろそろ場所変えよっか?」
「お、おう…!そうしよっか!」
(うそつき、か──)
亜美は太蔵に出くわしたこと以上に、千佳の言葉に動揺していた。
ふたりはショッピングモールを出て、とくに行くあてもないまま気づけば亜美の家の前に戻ってきてしまう。
「──どうする?もう帰る…?」
「もし良かったら…私の部屋に…来ない?」
「えっ?えええ?!でもっ…亜美の家、厳しいんじゃ…」
「今日は──大丈夫なの。だから…ね?」
「そ、そっか…。それなら────」