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セイドレイ【完結】
第19章 風評

そして、明くる土曜日の朝。

この日、亜美に課せられたミッションは、貴之をデートに誘い出し、自分の部屋に連れ込むこと。

そして、そこで貴之を "男にする" こと──。

亜美は憂鬱な気分で、そのための身支度をする。
そこへなぜか、服装のコーディネートに健一が立ち会っていた。

「う~ん…。やっぱりミニスカート一択だろ?そんでニーハイだよな…」

姿見の前で、ああでもないこうでもないと服を取っかえ引っ変えする健一。

「…よし!これで完璧だな。まさに俺好み」

「あの…健一さんは、こういう感じがお好きなんですか…?」

「ん?俺っていうか、男はみんなこういうのが好きなの!」


(男は…みんな?じゃあ水野くんも…──)


「あ、あとは髪型。やっぱポニーテールかな~。ちょっと縛ってみてよ」

亜美はヘアゴムを取り出し、髪をうしろでひとつに束ねた。

「どう…ですか?」

「うむ。めっちゃいいじゃん。完璧。ちょっと勃ってきた…はぁ。なんか納得いかねー」

不貞腐れる健一を、亜美は不思議そうな表情で見つめる。

「…いやさ。まぁしょうがないことかもしんないけど、最近新堂のおっさんの考えてることがちょっとさ…よく分かんないつーか。親父もなんにも言わねーし。てか最近親父とやってる?」

「いえ…最近はあまり…。なかなかお時間がないのかも…」

「ふーん…。本当に時間か理由かなぁ。なんか親父もちょっと変なんだよな。で結局、なんだかんだ慎二が一番好き勝手やってるだろ?ったく、なんでニートしてる奴が一番いい思いしてんだよ…」

健一が大きなため息をつく。

「はぁ…。大体、亜美に彼氏ができたっつーだけでも俺は相当ショックだし」

「…え?」

「この前のこと…俺、出まかせで言ったわけでもないんだぜ」

以前、健一がプロポーズまがいの発言をしたときのことだろうか。

「てかなんで俺、亜美の彼氏のために服選んでんだろ。なんかむなしくなってきた。はは…。今度俺ともデートしような」

「は、はい…」

この前の発言といい、ここ最近の健一は明らかに亜美に感情移入しているようだった。

そもそもが狂った世界──であるのに、健一とこうして談笑していると、亜美はそのことをつい忘れそうになる。


(私…今日水野くんと…本当にセックスするの…──?)


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