この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
セイドレイ【完結】
第19章 風評

週が明け、月曜の朝。
亜美は、屋敷の門の前で貴之が迎えに来るのを待っていた。
正直、どんな顔をして会えばいいのか分からない。
そもそも学校に行くのが3日ぶりであり、亜美はやや緊張の中で朝を迎えていた。
この土日の2日間、いつもとは違う空気が武田家の中に流れていた。
その理由は、貴之という存在が現れたことに尽きる。
自分たちだけの所有物だと思っていた亜美に、あろうことか "彼氏" ができた──。
そんなことをなぜ新堂が許したのか、健一と慎二は、内心では納得がいっていないようだった。
2人とも、亜美を "盗られた" ように気持ちになったのだろうか。
その嫉妬にも似た感情を、性欲として亜美にぶつけてきたのだ。
慎二の変態性は相変わらずであったが、いつも以上に感情的になっていたのは健一である。
何度も「結婚しよう」と口走り、性欲だけでなく感情のコントロールさえままならないようだった。
それもすべて、貴之を意識してのことだろう。
健一は、亜美を恋人のように扱いたいという欲求をついに隠し切れなくなっており、度々亜美を気遣うような言動も見られたほどである。
しかし、そんな状況に無関心を決め込む男が1人。
──雅彦だ。
本来であれば一番腹を立てているはずのその男は、もはや亜美に指1本触れることすらしなくなっていた。
毎夜、客の相手をしなければならない今の亜美にとって、それは少しばかり負担の軽減にはなっていたのだが──亜美は複雑な心境を抱いていた。
もっとも亜美を欲していたはずの男が、なぜ急になにも求めなくなったのか、ということに──。
「──おはよっ!ごめん待った?ちょっと寝坊して慌ててきたっ!」
「お、おはよ。ううん、私も今出てきたとこ…」
迎えに来た貴之は、気のせいかほんの少しげっそりしているように見えるが──それもそのはず。
貴之はこの土日、例の動画を見ては亜美とのセックスを思い出し、猿のように自慰に耽っていたからだ。
そしてそれは、つい数分前にも。
朝家を出る直前に、トイレで1発抜いてしまったのだ。
そんなふたりではあるが、表面上は平静を装っていた。
「案外普通だな」と、それぞれがホッと胸を撫で下ろし、学校へと向かった──。

