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セイドレイ【完結】
第19章 風評

亜美と貴之が教室に入る。
そのとき、一瞬だけクラスメイトたちの視線が一斉に自分たちに向けられたような気がした。
(な、なに…?)
なにやら教室の空気が普段と違うことに亜美は勘づいたが、気のせいかもしれないと席につき、カバンから教科書を取り出す。
すると、クラスの中では比較的目立つ女子3人組が、いつの間にか亜美の机を取り囲んでいた。
「高崎さんおはよー」
「お、おはよ…」
普段、話しかけられることのない女子たちに囲まれ、亜美は思わず身構える。
「高崎さんてさぁ、水野君と付き合ってるんでしょ?」
「えっ?えっと…その…──」
返答をにごす亜美に、今度は違う女子が追い討ちをかける。
「千佳には付き合ってないよ~とか言っといて、土曜日デートしてたんだってね?しかもさ~わざと千佳に見せつけたらしいじゃん」
「ち、違う!そんな…見せつける…なんてっ…」
「違う?なにが違うの~?付き合ってること~?それとも千佳に見せつけたこと~?」
「そ、それは…」
「なんかさぁ、前から思ってたんだけど、高崎さんてウチらのこと下に見てるよね?ウチらが誘っても絶対断るくせに、男子とはちゃっかりデートしてるなんてさ~感じ悪いよね~」
「そーそー。真面目なフリしてて男好きとか、結構エグくない?実際さぁ、高崎さんに変な噂あるって知ってる~?」
(変な…うわさ…?)
「結衣~、見せてあげなよ!」
「えー?私は無理無理!あんなの汚くて見れないよ~!だってマジキモくない?」
すると1人の女子が、スマホの画面を亜美に見せてきた。
「──これさぁ、高崎さんじゃないかって噂なんだけど」
(こっ、これはっ──)
亜美はその画面を見て背筋が凍った。
紛れもなくそれは、"あの動画" ──「セイドレイ」に投稿された、慎二と亜美の痴態を記録した動画の一部だった。
「──てかもう閉じていい?なんかこの動画開いてるだけでキモイから」
女子が浴びせる容赦ない言葉に、亜美は震え上がった。
どうにかして否定しなければ──そう思うも、極度の緊張から喉が閉まって声を発することができない。
「なんにも言わないってことはさー、やっぱこれ本当に高崎さん?だったらマジでウケるんだけど~」
(どうしよう…私っ…一体どうすればいいの────)

