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セイドレイ【完結】
第19章 風評

亜美としてはなによりも、あの動画を貴之が見てしまったということが気がかりだった。
『これは亜美じゃない』
女子たちの前で貴之はそう言い切ったが、もしかしたら勘づいているのではないか──と。
実際にカラダを重ねた後だけに、余計に不安がつのる。
その日、亜美は学校のどこに居てもなにをしていても、誰かに見られている気がして落ち着かなかった。
あの動画を見た生徒が、このクラスの中に、そして学年の中に居るのは確実なのである。
亜美はこのところの様々な状況が、悪化の一途を辿っていることに焦りはじめていた。
このままではすべて新堂の思惑どおりになってしまうばかりか、関係のない者まで巻き込んでしまう。
事実、貴之がそうであるように。
そして亜美は、今やすべての実権を握っているのは雅彦ではなく、新堂であるとの確信を持っていた。
新堂は亜美のカラダこそもてあそばないものの、その代わりとでもいうように "心" をもてあそぶ。
(いけない…私、しっかりしなくちゃ──)
なんとかその日をやり過ごし、やっとの思いで迎えた放課後。
亜美は下駄箱からローファーを取り出すと、その中になにか "小さなもの" が入っていることに気づく。
(これは…きっと本山先生だ。あとでお礼のメッセージ送っとかなきゃ)
亜美はその小さな物体をこっそり鞄に入れると、先に靴を履いて待っている貴之のもとへと駆け寄った。
帰り道──。
今朝、教室であんなことがあったというのに、貴之はそれについて一言も触れてはこない。
それも貴之の優しさなのだろうかと思うと、亜美は胸の奥がギュッと締めつけられるような感覚になる。
そしてふたりは、トメの家へ立ち寄った。
貴之とトメが談笑しているのを横目に、亜美は小屋へと向かいスマホをチェックをする。
およそ5日ぶりに見るスマホ。
亜美はまず、「セイドレイ」にアクセスした。
(とりあえず…大丈夫そう──)
亜美はホッと胸を撫で下ろす。
その後もコンスタントに動画は投稿されていたのだが、亜美が気がかりだったのはスクール水着で犯された日のこと。
胸元に「高崎」と名札が着いていたため、もしそんなものが動画として投稿されていたらと恐れていたのだが──さすがの慎二もそれときの動画はアップしていなかった。
(よし、次は──)

