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セイドレイ【完結】
第20章 朔

「あの…私が言うのも変なんですが…お父様、最近私のことを…その…──」
亜美はそう言いかけて、言葉に詰まってしまう。
「──すいません。やっぱり…いいです。お邪魔してごめんなさい」
そう言い残し、ベッドから立ち上がろうとしたとき──。
「──今夜はワシのそばに居なさい」
「え…?」
「聞きたいことがあるんだろう?」
「は、はい…」
亜美は再度ベッドに腰を下ろす。
「あの…お父様、近ごろなにかあったのかな、って…」
「どうして犯しにこないということか?わざわざそんなことを自ら聞きくるとはな。ワシが恋しくなったわけでもあるまいに」
「い、いえ…。でも、ちょっと気になってしまって…」
すると雅彦は亜美の腕を強引に引き寄せ、トランクスの上から股間を触らせる。
「おっ、お父様…?」
「ふんっ…情けないもんだな。このとおりだ」
しばらくして、亜美はその異変に気づく。
亜美の処女膜を破壊し、犯した雅彦のペニス──トランクス越しに触れたその感触は柔らかなまま、一向に硬くなる気配がない。
「──お父様、これはいつから…?」
「さぁな。お前を抱かないのは、単純にこいつが役に立たんからだ。ワシにも理由は分からん」
男性機能についての知識がない亜美にとっては考えが及ばなかったが、雅彦は還暦である。
しかも、亜美に出会うまでは長らく勃起不全を抱えており、むしろこの数ヶ月の威勢が異常だったともいえる。
しかし亜美には不思議に思えた。
これまで男たちはみな、亜美を見るなりそれを硬くしていたはず。
通常、年齢とともに男性機能は衰えていくものだが、亜美はそういったこともよく知らないのだ。
「これは…治るものなんですか?」
「ふんっ。治らないほうがお前にとっては都合がいいだろう?さっきからおかしなことばかり言っているな。頭でも打ったか?」
最近の雅彦から感じていた違和感の正体はこれだった。
亜美は無意識にこのことを察知していたのかもしれない。
「勝手なもんだが、こうなってからすべてがどうでもよくなってきてな。罰が当たったのかもしれん。だがいまさらあとにも引けん」
「お父様──」
それは、雅彦が初めて吐き出した "弱音" だった。
ここまで亜美の人生を滅茶苦茶にしておきながらまったくもって身勝手極まりないが、それゆえにひた隠しにしていたのだろう。

