この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
セイドレイ【完結】
第20章 朔

「──だが悪いことは言わん。鑑定するにしても奈美さんに内緒でやるのは感心できん。まずは夫婦で話し合ってみたらどうだ?」

雅彦は思い悩む信哉をそうたしなめたが、信哉はその後、奈美に黙ってDNA鑑定をしてしまう。

──結果として、亜美は信哉の子ではなかった。

その報告を受けた雅彦は、一度信哉と会って話すことにする。
信哉は、自分の子ではないが亜美が可愛いことには違いないと、その複雑な胸中を打ち明けた。

今後もその事実は隠したまま、自分の子として育てていくつもりがあるようだったが、ふとしたときに急に自信がなくなるとも言った。

そんな信哉を見ていると雅彦はいたたまれなくなり、ついに無精子症のことを本人に伝えてしまう。

それを聞いた信哉は逆上し、どうしてそのときに教えてくれなかったのだと、雅彦を責め立てる。
この4年もの間、なにも知らなかったのは自分だけだ、そんな自分を影で嘲笑っていたのだろうと、行き場のない怒りを雅彦にぶつけた。

それ以来、信哉と奈美が雅彦の前に姿を現すことはなかった。
11年後、変わり果てた姿で再会することになるまでは──。


♢♢♢


「──ワシが知っていることは以上だ」

話しを聞き終えた亜美の胸に、夢で見た母の、あの哀し気な表情が浮かんでくる。
果たして母がどういうつもりだったかは、雅彦の話だけでは分からない。
いくつも疑問が生じたが、それを一番問いたい相手はもうこの世にいないのだ。

不思議と涙は出なかった。
亜美が知るかぎり、両親は本当に愛情を持って育ててくれたし、今でもそう思っている。

「──何も知らなかったのは…私だけなんですね」

亜美はそう小さくつぶやいた。

「ほかに…聞きたいことはないのか?」

「はい。もう…大丈夫です」

すると雅彦は亜美の肩に腕を回し、耳もとでこうささやく。

「…今夜はここで寝ていきなさい。心配するな、ワシはもう役立たずの老いぼれだ」

「はい…────」

ふたりはそのままベッドに潜り込む。
掛け布団からかすかに漂う、雅彦の体臭と消毒液の混ざったにおい。


(お父様のにおいがする────)


「──…消すぞ」


雅彦が部屋の明かりを消し、ふたりは夜の闇に包まれた。


/903ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ