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セイドレイ【完結】
第20章 朔
それは静かな夜だった。
亜美はなかなか寝つくことができず、天井をじっと見つめて、さまざまな思いをめぐらせる。
母はどんな想いで自分を産んだのか。
すべてを知った父は、真実とどう向き合っていたのだろうか。
両親ともに、自分のことを本当はどう思っていたのだろうか。
そして、自分はなんのために生まれたのだろうか──。
「──おとう…さま」
亜美はふと、となりで横になる雅彦に声をかけた。
すると雅彦が、その大きな背中で返事をする。
「──なんだ。眠れないのか?」
雅彦が寝返りを打ち、暗闇の中で目が合うふたり。
どちらともなくカラダを寄せ合い、しばし見つめ合ったあと──唇を重ねた。
いつになく静かでありながら、いつになく熱のこもったディープキス。
数ヶ月ぶりに絡め合う、雅彦の唇、舌、唾液──。
人生を滅茶苦茶にした張本人であるはずのその男に、亜美は行き場のない感情を委ねていた。
ふたりの唾液が糸を引いて伸びる。
「──んはっ……おとお…さまっ」
「亜美…、ワシが憎いか?」
雅彦が吐息混じりに亜美に問う。
「わからない……ただ、ただっ…──」
かすかに、亜美のすすり泣く音が聞こえてくる。
「どうして…私のところに来てくれないの?って…思って…しまっ……しまいっ…ウウッ…────」
亜美は涙を流しながら、今たしかにそう言った。
「お、お前っ…なにを言っている…?」
雅彦は耳を疑った。
いや、そんなはずはない。
あるはずがない。
この女は、自分を殺したいほど憎んでいるはず──。
「──自分でもっ…今なにを言ってるのかっ…わ、分からない…。でもっ……おとぉさまに…き、嫌われたのかとっ、おもっ、思ったら……こわっ…こわかっ…た…──」
まるでこの数ヶ月、ずっと雅彦を待ち焦がれていたとでも言うような亜美のその言葉に──雅彦の下半身は反応を示す。
全身の血液が股間に集中していく感覚。
はじめて亜美を見たときと同じ──いや、あのときより強く、雅彦のペニスは脈を打ち、硬く膨れ上がっていた。
「──あれ?…おとお…さま?」
亜美もすぐにその変異を察知した。
雅彦のペニスが再び自分に反応を示している──。
亜美はそれを、
ほんの一瞬でも、
"うれしい"
と感じてしまった。
「──亜美っっ!!!!」