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セイドレイ【完結】
第21章 満月の喧騒
♢♢♢
亜美が毎夜、雅彦の寝室を訪れるようになってからしばらく。
その夜も「コンコン」と、ドアをノックする音がした。
「──入りなさい」
「失礼します…」
虚ろな表情を浮かべた全裸の亜美が、部屋へと入ってくる。
おそらく、ついさっきまで客の相手をしていたのだろう。
雅彦は急患の対応をした直後で、まだ白衣にワイシャツという格好のままだった。
「──来なさい」
雅彦は両腕を拡げ、亜美を胸に抱き寄せる。
そのやや張り出した鳩胸に、そっと顔をうずめる亜美──。
「──お父様…今日は…?」
亜美は雅彦の股間をまさぐる。
「うむ…。今日はダメみたいだな。この役立たずめ」
この日の雅彦のペニスはしぼんでいた。
まだ日によって勃起する日としない日があり、亜美は毎夜、まずその挙動を確認する。
もしここで雅彦が勃起をすれば、亜美は自らそれを口にくわえ、なにも言わずにセックスを始めようとするのだった。
もちろん、この一連の流れは亜美が自発的に行っていることであり、雅彦が強要しているわけではない。
こんな亜美の不可解な行動について、おそらく亜美が出生の真実を知ったことと関係があるのでは──と雅彦は考えてみるも、実際のところは分からなかった。
それ以外では、とりわけ亜美におかしな点は見当たらない。
毎日学校にも行っているし、"彼氏" と過ごす時間についても新堂から与えられているようである。
客の相手にも慣れてきたのか、混沌とした状況のなかでもある種の安定感すら感じさせるほどだった。
勃起しないことを確認した亜美は、雅彦のワイシャツのボタンを外し、白衣から順に脱がせていく。
そうして現れた分厚い胸板には、白髪混じりの胸毛がびっしり生い茂っていた。
「おとおさま…──」
亜美はそうささやくと、胸毛をそっと撫でては、なにやらもどかしそうな表情を浮かべるのだった。
「──なんだ。なにか不満でもあるのか?」
「い、いえ…」
「横になるぞ。お前も疲れているだろう」
ふたりはベッドに潜り込み、肌と肌を寄せ合う。
いつもならこのまま寝てしまうのだが、この日の亜美はどこか落ち着かない様子だった。
「──どうした?またワシに聞きたいことでもあるのか?」
「あの…お父様はどうして…私を…この家に?」
「今さらなにを…。そんなことを聞いてなんになる?」