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セイドレイ【完結】
第21章 満月の喧騒
「い、いえ…。ただ、お父様の…その…アソコ…が、おっきくならなくなったのは、そういう女性たちをたくさん見てきたからなのかな、って…」
またしても亜美が真理を突く。
それは雅彦も薄々は自覚していたことだった。
仕事柄、これまで数え切れない女性器を見てきた。
そのせいか、雅彦にとってそれはもはやただの記号のようなものになってしまっていた。
女性器を見ても性的な興奮を覚えない──これは産科医として、むしろ都合がよかったのだが。
幸せな場面と同じくらい、悲惨な光景も目にしてきた。
そして必ずその裏には、男と女の業があった。
そんな現実を目の当たりにしているうち、雅彦は男に生まれてきたことがどうしようもなくちっぽけで、しょうもないことであると感じるようになる。
そんな日々を過ごすうち、やがて雅彦は男の機能を失った。
やれるだけのED治療も試した。
しかしなにを試しても、どんな女でも、それを解決してはくれなかった。
そして気づけば、ただ老いてしまっていた。
もうそれを気にする歳ですらなくなっていたのだ。
そんな枯れ果てた男を、亜美が再び焚きつけてしまったのである。
雅彦が感じていたあらゆる諦観を、あの日亜美が一瞬にして蹴散らしてしまったのだ。
「──ふんっ。お前も分かったような口を聞くようになったな。ワシを惨めだと思っているんだろう?だから毎晩ここに来るようになったのか?不能なワシの顔を見てそんなに楽しいか?それともあわれみか?さぞかし清々していることだろうな」
思い通りにならない下半身──卑屈になった雅彦は、その苛立ちを亜美にぶつけてしまう。
雅彦は、亜美のカラダを貪る2人の息子、会員たち、そして彼氏である貴之のことがうらやましくてしょうがなかった。
そしてなにより、悔しかったのだ。
「──もう寝なさい。ワシはシャワーを浴びてくる」
雅彦がベッドから立ち上がろうとした、そのとき──。
「──私、お父様の子どもがほしい」
「なん…だと…──?」
雅彦は耳を疑った。
最近の亜美の様子からすると、支離滅裂なことを言い出してもおかしくはないが、しかし──。
雅彦はまたしても、その15歳の少女が放つ言葉に激しく動揺してしまう。