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セイドレイ【完結】
第23章 折衝
亜美は、紗枝からの問いに初めて口を開いた。
今のところ生理が来ていないこと以外、とくに体調面での変化はなかった。
「そう…。さっきはひどいこと言ってごめんなさいね。許して…」
紗枝は目に浮かぶ涙をハンカチで押さえ、亜美に許しを乞うた。
「い、いえ…。とんでもない…です」
「──では、ここからは具体的な話を進めたいと思うのですが、よろしいですかね?」
そう言って雅彦が場を仕切り直すと、俊之と紗枝は無言でうなづく。
「ではまず、性行為に対して、2人の間に合意があったかの確認をしたいのですが──」
雅彦の言葉に、一同が目を丸くする。
「ちょ、ちょっとすいません…。私の認識では、2人は交際しているわけですから、もちろん合意の上でのことだという前提でお話をさせていただいていると思っていたのですが…」
俊之が少し焦った様子で雅彦に異を唱えた。
亜美も思わず、となりにいる雅彦に視線を送る。
「そうですか。しかし、ほぼ毎日のように性行為に及んでいて、一度も避妊をしなかったというのは考えものです。貴之君が避妊具を装着しない行為を強要し、それを亜美が断ることができなかった、とも考えられます」
「…そ、そんな馬鹿な!うちの息子が無理矢理お宅の娘さんをレイプしたとでも!?それはあんまりです!第一、先ほども申しましたが亜美さんはピルを服用していると貴之に言ったそうじゃないですか!?ではそれはどういうつもりで言ったんですか!?避妊に対する意識が欠けていたのは亜美さんだって同じでしょう!?」
ここまで冷静だった俊之も、たまらず語気を強めた。
「ほう…。すると、お宅の息子さんは、女性がピルを服用していると分かれば、毎日のように膣内への射精を行ってもいいとの教育がされてきた、という認識でいいですかね?亜美は避妊のためにピルを服用していたわけではありません。あくまでそれは二次的な効果です。それに、避妊具を装着しないリスクはなにも妊娠だけではありませんよ?」
「な…なにがおっしゃりたいんですか!?いくらなんでもひどすぎる…今のお言葉は撤回して下さい!」
「では、2人が性行為に及んでいた場所を知っていますか?公園や商業施設のトイレですよ?聞いて呆れますな。しかも毎回、亜美は男子トイレに連れ込まれていた。お宅の息子さんの性教育が歪んでいたとしか思えませんがね」