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セイドレイ【完結】
第23章 折衝
「そ、それは…!2人とも学生で、そういったことに及ぶ場所がなかったからでしょう?それで仕方なく…」
「そうですか。では、あなた方ご夫婦はそのような場所での性行為に寛容であると。親が親なら…ですね。公共施設ですよ?しかも男子トイレに女子を連れ込んで。このことでどれだけ亜美が精神的な苦痛を味わったか、想像すらできませんか?」
「そ、そんなっ…──」
亜美は話の方向が見えなかった。
雅彦の…もとい、新堂の目的はなんなのか。
このままでは、貴之にさらなる濡れ衣を着せるだけである。
あらぬ疑いをかけられているのに、貴之は黙って下を向いたままだ。
(あれ…?水野くん……?)
亜美はそのとき、貴之の様子がおかしいことに気づく。
大人たちは話し合いに夢中で、誰もそのことを気にかけていない。
(水野くんっ…あのときと同じっ…──)
貴之は、見るからに肩で呼吸をしていた。
息が浅く、間隔も短い。
そしてとても苦しそうにしている。
「──み、水野くんっ…!」
亜美が咄嗟に声を張ると、ようやく俊之と紗枝も貴之の異変に気づいたようだ。
「たっ、貴之…!?す、すいません、ちょっと場所を…違うお部屋をお借りしてもよろしいですかっ?あと、お水をっ──」
紗枝が貴之の背中をさすりながら、あわててバッグの中から薬を取り出す。
貴之は片手で胸を押さえ、悶え苦しんでいた。
「だ、大丈夫ですか…?それなら、こっちの部屋を…私についてきてください」
雅彦が別室へ案内しようするが、亜美がその役目を買って出た。
「──わ、私が案内しますっ…お水も持って行きますっ!」
「そ、そうか…。では、頼んだ──」
紗枝は貴之を肩に担ぎ、亜美に続いて客間を出ていった。
そして、部屋に残された雅彦と俊之。
「──失礼ですが、息子さんは…呼吸器系の持病かなにかがおありで?」
「はい…実は、その────」