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セイドレイ【完結】
第23章 折衝
別室へと移動した貴之と紗枝。
そこへ、亜美がコップ一杯の水を持ってやってくる。
「──お水っ…持ってきましたっ!」
「ありがとう…。ごめんなさいね、助かるわ…貴之、飲める?」
貴之は薬を飲み終えると、畳の上に仰向けで寝転んだ。
「私、枕持ってきます…。あと、ほかにいるものありますか…?」
「ううん、大丈夫よ…ありがとう。しばらくしたら治まるから…」
「そう…ですか。あの、水野くんのこれは…持病…なんですか?」
「そうね…、実は────」
紗枝が貴之の病状を説明しようとした、そのとき。
「か…、かあさんっ…亜美には…言わない…でっ──」
貴之は振り絞るような声で、それを止めた。
「貴之…?でも、恥ずかしいことじゃないんだから…」
「言う…なら…自分で……言うか、ら……」
貴之の呼吸の間隔が、次第に落ち着いてくる。
薬が効いてきたのだろう。
「──ねぇ、亜美ちゃん?貴之の…どこを好きになったの?」
「えっ…?えっと──」
紗枝からの思いがけない問いに、亜美は動揺する。
「ねぇ?貴之が無理矢理…亜美ちゃんを傷つけたなんてこと…ないでしょ?」
「それはっ…その…──」
「そんなこと…ないわよね?ねえ?亜美ちゃん!ないって言って…!お願いっ…ないって言ってっ…ウッ…ウゥッ…──」
紗枝はすすり泣きながら、畳に顔を伏した。
「──かあ…さん、亜美を…責めないで…」
「貴之?べつに…責めてるんじゃないのよ…?ただ、これじゃあんたがあまりにも不憫で…」
「お、おれは…──」
「…なに?貴之?」
「──亜美に…生んでほしい。亜美と、結婚した…い…から」
(え…──?)
「貴之?なに言ってるの…?」
「あ…亜美を、幸せに…したい。亜美と…家族になりたいんだ」
「結婚するって…あんた、学校はどうするの?まだ高校生なのよ!?これから大学受験だってある…いくらだって未来があるのよ?それに、子どもを育てるってことが、どれだけ大変なことか分かって言ってるの!?」
「わ…からない。けど…学校やめて…働く…。俺が亜美と…その子を守ってく…」
「貴之っ…!?いい加減にしなさいっ…!母さん怒るわよ!?」