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セイドレイ【完結】
第23章 折衝
「亜美は…親が死んでから……ずっとひとりぼっちなんだ。この家で…ずっとさみしかったんだ。だから…俺と…俺たちの子供で…家族になりたい…」
「あ、あんたっ…。でもっ、母さんはっ…──」
そのときだった。
「ドスッ」という音とともに、亜美がカクンと畳に膝を落とす。
「──亜美…ちゃん?」
「…ゴメンナサイ」
「え…?どうしたの…?」
「ごめん…なさいぃ…私っ…ウッ…ウゥッ……うわぁぁぁん────」
亜美は突如、声をあげて泣き出した。
そこへ、貴之の様子を見に来た雅彦と俊之が現れる。
「──どっ、どうした!?亜美!?」
「紗枝っ…お前、まさか亜美さんになにか言ったのか!?」
俊之は紗枝を問いただす。
しかし紗枝も泣いたままで返事をしない。
「──今日はとりあえず、紗枝さんと貴之君はお帰りになった方が。亜美も部屋で休みなさい。あとは私と、俊之さんとで話しましょうか」
「そう…ですね。では、2人はまた日をあらためて…おい、お前たちは先に帰ってなさい。貴之、立てるか?」
「うん…。もう…大丈夫」
「すいません…ちょっと玄関まで見送って来ます。すぐ戻ってきますので──」
俊之はそう言うと、紗枝と貴之を連れて玄関へと向かった。
「──亜美、どうした?なにか余計なことを………まぁいい。部屋に戻ってなさい」
「……ハイ」
亜美はおぼつかない足取りで部屋へと戻った。
一方、玄関先では、紗枝が俊之になにかを耳打ちしていた。
「──なんだって?貴之がそんなことを…?」
「ええ、結婚するんだ、って…。そしたら、亜美ちゃんが急に泣き出しちゃって…。とにかく、帰ってからまたゆっくり話しましょう。あなた、しっかりね…」
「ああ。分かった。お前たちも気をつけて帰れよ──」
俊之は2人の後ろ姿を見送ると、大きく深呼吸をして、雅彦の待つ客間へと戻ったのだった。