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セイドレイ【完結】
第4章 野性
その電話は、もうずいぶんと疎遠になっていた親族の夫婦が交通事故で亡くなった、との知らせであった。
そう──、この夫婦とはまさしく、亜美の両親である信哉と奈美のことだったのである。
かつては交流があったが、"とある出来事" がきっかけで、かれこれ十何年も会っていない。
「…分かった。もちろん葬儀には顔を出す。しかし…、なんだってまた交通事故なんかにっ……」
久々の知らせが、まさかこんなものになろうとは。
雅彦は電話を切ると、少し肩を落として椅子に腰掛けた。
「…まだ2人とも若いのに、なんと気の毒な。しかも一人娘を遺して…。たしかまだ中学生くらいじゃなかったか…────?」
数日後、雅彦は葬儀場へと向かう。
受付で記帳を済ませ斎場の中へ入るとすぐ、雅彦はひとりの少女の姿に目が釘付けになった。
「(あ、あれはっ…──?!)」
思わず息を飲むほどの美少女が、真新しい制服を身にまとい、祭壇の脇でぼう然と立ち尽くしている。
艶やかな黒髪。
透き通るような白い肌。
そして大きく美しい瞳。
その様子は、まるでヒトではない何か──。
触れたら壊れてしまいそうに儚げで、血の通っていない繊細な人形のように見えた。
少女は、もう涙も枯れ果てたといった様子で、ただぼうっと一点を見つめて佇んでいた。
悲しみに暮れた表情が、より少女の魅力を引き立てる。
ただただ美しく、そして、ひどく官能的だった。
それは、これまでどんな女にも感じたことのない、衝撃的な感覚だった。
ふと、雅彦は自分の下半身の異変に気づく。
機能を失っていたはずの "モノ" が、今にもムクムクと逆立とうとしているではないか。
それは紛れもない──、勃起の感覚。
「(ばっ、馬鹿なっ…!こんなことあるはずがっ…──)」
雅彦は、慌ててトイレの個室に駆け込む。
スラックスとパンツを下ろすと、そこには20年ぶりに血の巡った自身の男性器があった。
「(一体なんなんだ…これはっ…!?)」
驚きを隠せない雅彦だったが、その勃起力は一向に治まる気配がないどころか、さらに増していくかのよう。
60歳という年齢を加味すると余計に信じられないほどに、ソレは固く反り返り、今にも腹に付くかのような勢いだった。