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セイドレイ【完結】
第25章 暗転

「──ふぅん。で、どんな課題?」
「え…?えっと、今数学をやってて、ちょうどこの設問で悩んでたところで…」
すると慎二は、机に向かう亜美の背中にワザとカラダを密着させ、その設問を覗き込む。
真冬だというのに、汗ばんでジトっとした慎二のカラダ。
よく見てみると、慎二は亜美がプレゼントしたスウェットを身に着けていた。
肥満で汗かきの慎二にとっては、たとえこの12月末の気温だったとしても、室内でスウェットを着るのは少々暑かったのかもしれない。
「──どれどれ…ふむふむ。なるほどね。これはさぁ~」
しかしそんなことはどうでもよくなるほどに、亜美は驚いていた。
それまで亜美がなにをしていようと、性的なこと以外にはまったく関心を示さなかった慎二。
そんな男が、今亜美の真横で、設問の解き方を指導してくるのだ。
しかもその速さ、的確さ、分かりやすさに──亜美は思わず息を飲む。
メモ書きにペンを走らせる慎二の筆跡は、その見た目に反して実に几帳面なものであることも意外だった。
「──って感じかな?多分これで合ってると思うよ~ん」
「あっ…あの…」
「ん?どうしたの?」
「あのっ!こっちの設問も教えてもらっていいですか??」
「え~?…まぁいいけど。んぅと、これは──」
以前、健一から話には聞いていたが──かつては "神童" と呼ばれていただけのことはある──亜美は慎二の横顔に、その片鱗を見たのだろう。
次から次へ、いとも簡単に設問を解き、分かりやすく解説をしてくる慎二。
その姿からは、普段の陰鬱とした慎二の面影は感じられず、亜美はついつい見入ってしまう──。
「──もういい?ほかは大丈夫なの?」
「は、はい…!ありがとうございますっ…。すごいですね、ご主人様…」
お世辞やご機嫌取りではなく、亜美は素直に慎二を賞賛していた。
「そ、そうかな?高一の範囲くらい、余裕だよ?」
「…ご主人様は…家庭教師とか、塾講師とかがいいんじゃないでしょうか?」
「…え?あぁ、親父が言ってた話?」
クリスマスイヴの夜、雅彦は慎二に、来年から仕事をするように命じていた件についてだ。

