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セイドレイ【完結】
第1章 悲劇のヒロイン
「──ありがとう。いつも心配してくれて。また今度、ゆっくりお話したいな」
亜美はそう言うと、力ない笑顔をクラスメイトに向けた。
(私は…この子たちとは違う世界にいるんだ──)
亜美が引き取られた親戚の家──。
そこは、「武田クリニック」という産婦人科を開業している、ここらでは有名な資産家だった。
亜美が通うこの中高一貫の私立高校「光明学園」には、近隣の金持ちの子息、息女が一堂に集まっている。
いわゆる、お坊ちゃま、お嬢さま校だ。
校訓は、「光かがやく明日(みらい)へ」。
厳しい校則のおかげか素行不良の生徒はおらず、風紀は良い。
制服は、男女ともにネイビーのブレザー。
女子はそれにチェックのプリーツスカートと、ネイビーのハイソックスを合わせる。
そんな清楚な装いに身を包む少女、亜美──。
その容姿は誰が見ても、"絶世の美少女" と言えるほどに麗しく、可憐である。
しかし本人はそのことに、まったくといっていいほど無自覚なままであった。