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セイドレイ【完結】
第27章 愛
慎二は目が点になる。

間違いない。
背格好からして、昨夜見た『タカ』そのものだ。
何より、着ているジャージが全く同じだ。

あれは『タカ』で、そしてそれは、『水野貴之』だ。

次の瞬間、慎二は脇目も振らず、その男目掛けて走り出した。

その勢いのまま、100キロはある巨漢でタックルをかます。

思い切りぶつかった反動で、二人共地面に倒れ込んだ。


「痛っ……!ちょっと何すんだよ!?ちゃんと前見て……あ、」

突如、何者かに衝突された貴之は、同じく地面に倒れ込む男を見て驚愕する。

「ぐっ…お前……亜美をどこへやった!?俺には分かってるんだぞ!!…お前が『タカ』だってこと…」

「あ、あんたは亜美の…お義兄さん…」

「…あぁ、そうだよ!俺の…俺の亜美をどこへ隠してる!?しらばっくれても無駄だぞ!?こっちは全部分かってんだからな!…イテテ」

「…ど、どういうことです?亜美を隠してるって…まさか亜美が居なくなったんですか!?」

「けっ…!往生際の悪いヤツだぜ。お前が亜美を連れ去ったんだろ!?田中さんの家に押し寄せて…!」

「…は、はぁ!?いやっ…その…確かに、俺は『タカ』ですし、公園のトイレで亜美を連れ去ったのも俺です。…でもあの時、亜美は自分の意思であんたのとこに戻るって言ったんです!だから…そのまま返しましたけど…その後居なくなったってことですか!?」

「な、なに…?じゃあ田中さんが言ってたことは……」

道路の真ん中で倒れ込み口論をする二人を、通行人が怪しげな目で見ていく。

「とっ…とりあえず、場所!場所変えましょう。あ…立てます?」

「ぐっ……あぁ、何とか……イテテテテテ」


二人は近くのコンビニへ移動すると、イートインスペースの椅子に腰掛ける。


「あの…怪我、大丈夫です…?」

何でぶつかられた方が、ぶつかって来た方の心配をしなければいけないのかと貴之は思っていた。
話し合いの前日である今日、モヤモヤした気分を少しでも晴らそうとジョギングをしたら、まさかこんな目に合うとは…。


「うん…顔擦りむいちゃって……てか、そんなことはどうでもよくて!本当に…本当にお前はやってないの??」

「だからやってないっすよ…!あの時、俺は亜美に警察に行こう、って言ったんです。そしたら亜美が、もう俺を…巻き込みたく無いから関わらないで、って……」
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