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セイドレイ【完結】
第30章 姿なき脅迫
返事を濁す貴之に、たまらず千佳がこう言い放つ。
「……もう…亜美ちゃんはいないなんだから…ちょっとくらい…いいでしょ…?」
「あ………」
千佳の複雑な表情を察した貴之。
『亜美はもういない』
他人からその名を聞くのはいつぶりだろう。
一瞬、時が止まったような気がした。
「……わ、分かった。どうする?学校じゃない方がいい?どっか行くか?」
「そう……だね。ゆっくり話せるとこがいいな」
本音を言えば、貴之は千佳の誘いに乗り気では無かった。
ついさっき、亜美のことを忘れようと決めたところなのだ。
直接は関係無いとは言え、千佳にとって亜美は恋敵とでもいう相手。
そして案の定、千佳は早速亜美の名を口にした。
正直なところ、今は亜美にまつわる話題は避けたかった。
だが同時に、そう思っているうちは忘れることなど出来ないとも思った。
千佳が何を考えているかは分からない。
恐らく亜美の話題にもなるであろう。
それならそれで、仕方ない。
忘れるためには避けては通れぬことだと思い、貴之と千佳は二人で校舎を後にした。
そんな二人が連れ立って歩いて行くのが、部活の指導に向かう本山の目に入る。
「(なんだ…あいつら二人して……あれは新垣市議の娘じゃねぇか…高崎が居なくなったからって、早速そういう事にでもなってんのか…?)」
図らずも新堂の手下となってしまった本山は、千佳の父親である市議会議員の新垣太蔵が、亜美の客であることを知っていた。
亜美は学園から姿を消すも、実際には今も新堂のマンションで客の相手をしている。
もちろん新垣太蔵も、未だに会員の一人だ。
現時点で、貴之と千佳の関係性は分からないが、二人の距離が縮まっているかもしれないということを、新堂に報告すべきなのか本山は悩んだ。
もしかしたらたまたま一緒に居るところを見ただけ…かもしれないが、学校での貴之の行動を一応気にかけておくべきだろう。
「(全く……あのガキ、知ってか知らずか、何かとこちら側に関わってきやがる…何か呪われてんじゃねぇのか?)」
本山は、ある意味貴之のことを気の毒に思いながら、校門を出ていく二人の後ろ姿を横目に部活の指導へと向かった。
「……もう…亜美ちゃんはいないなんだから…ちょっとくらい…いいでしょ…?」
「あ………」
千佳の複雑な表情を察した貴之。
『亜美はもういない』
他人からその名を聞くのはいつぶりだろう。
一瞬、時が止まったような気がした。
「……わ、分かった。どうする?学校じゃない方がいい?どっか行くか?」
「そう……だね。ゆっくり話せるとこがいいな」
本音を言えば、貴之は千佳の誘いに乗り気では無かった。
ついさっき、亜美のことを忘れようと決めたところなのだ。
直接は関係無いとは言え、千佳にとって亜美は恋敵とでもいう相手。
そして案の定、千佳は早速亜美の名を口にした。
正直なところ、今は亜美にまつわる話題は避けたかった。
だが同時に、そう思っているうちは忘れることなど出来ないとも思った。
千佳が何を考えているかは分からない。
恐らく亜美の話題にもなるであろう。
それならそれで、仕方ない。
忘れるためには避けては通れぬことだと思い、貴之と千佳は二人で校舎を後にした。
そんな二人が連れ立って歩いて行くのが、部活の指導に向かう本山の目に入る。
「(なんだ…あいつら二人して……あれは新垣市議の娘じゃねぇか…高崎が居なくなったからって、早速そういう事にでもなってんのか…?)」
図らずも新堂の手下となってしまった本山は、千佳の父親である市議会議員の新垣太蔵が、亜美の客であることを知っていた。
亜美は学園から姿を消すも、実際には今も新堂のマンションで客の相手をしている。
もちろん新垣太蔵も、未だに会員の一人だ。
現時点で、貴之と千佳の関係性は分からないが、二人の距離が縮まっているかもしれないということを、新堂に報告すべきなのか本山は悩んだ。
もしかしたらたまたま一緒に居るところを見ただけ…かもしれないが、学校での貴之の行動を一応気にかけておくべきだろう。
「(全く……あのガキ、知ってか知らずか、何かとこちら側に関わってきやがる…何か呪われてんじゃねぇのか?)」
本山は、ある意味貴之のことを気の毒に思いながら、校門を出ていく二人の後ろ姿を横目に部活の指導へと向かった。