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セイドレイ【完結】
第30章 姿なき脅迫
「…お風呂、お湯張っといたからさ…シャワーだけじゃ疲れが取れないと思うから…ゆっくり温まっておいで」

田中は優しい口調で、亜美に入浴を促す。

基本的に、亜美にとって田中は無害だった。

むしろ喜んで、食事を含め身の回りの世話をしてくれているように思える。

無理矢理襲ってくることも無く、新堂の言いつけもちゃんと守っているようだった。

武田家に居た頃は、いつ来るかも分からない慎二の奇襲が一番の負担と言えば負担だった。

いつしかそれが当たり前となり感覚が麻痺して行ったが、体力的には相当にしんどいものがあった。

ここでの暮らしはそれに比べるとずっと穏やかだ。

食欲を無くしていた亜美は、食事にほとんど手をつけない日もあった。
それでも毎日毎日、しっかりと手料理を作ってくれる。
味も申し分ない。
むしろ、亜美よりも田中の方が料理上手とさえいえる。

たまにふと食べたい物を言えば、とても嬉しそうな顔をして、必ずそれを用意してくれる。


排泄に立ち合われることに関しては、最初こそひどく抵抗があったのだが、もうそれにも慣れてしまった。


では、田中は本当に亜美に指一本触れていないか、というと、そういう訳では無い。

新堂は、田中に対して以下の条件を出していた。

口淫に関しては、特に回数に制限なく行って良い。
ただし、亜美が会員とのセックスが終わり戻った後、シャワーを浴びる前の状態に限る。

そして、膣への挿入は原則禁止。

ただし、アナルへの挿入は回数に制限なく行って良い。
こちらも口淫と同様、会員との事後のみに許可されている。

つまり、田中が亜美を抱けるのはどういう時かというと、会員達から散々に汚された後、ということになる。

会員の予約が入っていない日は、亜美を抱くことは禁止されている。

そしてこのルールは、本山にも全く同じ条件で適用される。

その他、新堂の気まぐれで許可が下りる場合もあるが、基本的には二人とも素直にこれを守っている。

本山も田中も、あくまで会員達のおこぼれをもらっている、という扱いだったが、二人とも亜美のカラダにありつけるのであれば、嬉々とそれに従っていた。

特に本山は、一度亜美との接触を絶たれた苦い思い出がある。

だから膣への挿入は出来なくても、それに代わる穴があるのならそれだけで十分だと感じていた。
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