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セイドレイ【完結】
第30章 姿なき脅迫
「うぅっ…はい……んっ……んはぁ」

田中の言う『いつもの』とは、亜美が浣腸に身悶えている間、田中とキスを交わし続けるというものだった。

亜美にはこの行為に一体何の意味があるのか分からなかったが、田中は何故かひどく興奮するらしい。

「んっんっ…んふぁ…んっんんんぅ…ふぁ……あみひゃん…しゅき……だいひゅきっ…かわいぃぃぉんんぅ…」

田中はうわ言のようにそんなささやきをしながら、ねっとりと舌を絡め合いお互いの唾液を交換する。

浣腸液でほんの少しぷっくりとした亜美の下腹部を、それは大切なものを愛でるかのように手のひらでさすりながら。

田中はただ、便意を我慢している亜美の姿が健気でいじらしく、愛おしく感じてしまうから故の行為だった。

しかし亜美にとってはディープキスをしていることでどうしても肛門が緩み、いつその内容物をひり出してしまうのではないかと気が気で無かった。

「たなかしゃんっ……わたし…もぅ…らめぇ……おなかっ…いたいの………」

そろそろ限界が近い。

「あぁっ…!亜美ちゃんっ…しゅきっ……んんぅ…まだ、だめだょ…あと一分……がまんしよぉね?ねっ?」

そんなやり取りを交わしながら、亜美は刻一刻と迫り来る猛烈な便意にカラダをよじらせて最後の抵抗をする。


「あっ……もぉ……むり…………あっ!あああああ」


次の瞬間、下品な破裂音と共に、亜美の肛門からは勢いよく浣腸液が吹き出した。

下腹部の痛みから一気に解放され、排泄と同等の強烈な快感が亜美の全身を駆け巡る。

ぶしゅぶしゅっ、と浴室の床に排泄される音を聞きながら、田中はいつもここで亜美を抱き締める。

「亜美ちゃん…がんばったねっ……大丈夫、今日もすごぉく綺麗だから……汚くなんかないよ……亜美ちゃん…」


その後、田中は亜美の全身をくまなく洗った。


しばらくすると、本山の迎えが到着する。

亜美は全裸にニーハイソックスのみを履かされ、その上に一枚コートを羽織るだけという格好で本山の車の後部座席に乗り込んだ。


「……じゃあ行くぞ。今日も忙しくなりそうだぜ。寒くないか?」

ルームミラー越しに、本山が亜美を気遣ってみせる。

「…はい。大丈夫…です」

本山の車は、新堂のマンションを目指し夜道へ発進する。

今の亜美の一日は、こうしてスタートするのだった。

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