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セイドレイ【完結】
第31章 少女の肖像
そんな頃、貴之は自室のベッドの上で深い溜め息をついていた。


「はぁ~………」


結局あの後、千佳から交際を申し込まれた。
一時間ほど話しただろうか。
何となく予想はしていたものの、いざ面と向かって気持ちを伝えられると…色々難しいものだ。

もちろん貴之は断ったのだがーー、
千佳は何度も食い下がり、しまいには泣き出して諦める様子が無かった。

周囲の視線が痛かったこともあるが埒が明きそうも無かったため、「せめて友達から」という千佳の要求を最終的には聞き入れ、お互いに連絡先を交換した。

話が終わる頃には夜も暗くなっており、自宅は反対方向だったが貴之は千佳を家まで送り届けた。

早速、メッセージが途切れなく送られてくる。

聞いてもいないのに、夕飯を食べただの今から風呂に入るだの、逐一自分の状況を報告してくるのだった。

思えば、亜美と付き合っていた時は、実際に会う以外に連絡手段が無かった。

朝に顔を見ればおはようと言い、帰りにはまた明日とお別れすれば、二人の一日はそこで終わりだった。

その後亜美はあの武田家で、どんな夜を過ごしていたのだろう。


「あー…もう……ダメだぁああ!」


貴之はぐしゃぐしゃと髪を掻く。

忘れようとしていたはずなのに、今更ながら疑問が増えて行くばかりだ。

千佳から聞いた話のせいで、余計に拍車がかかる。

あの写真の女は、きっと亜美だ。
ほぼ間違い無いだろう。

『あの動画』を初めて見た時も、それを信じたくなかっただけで、多分最初からあれが亜美であることは分かっていたのだと思う。

あの時は、まだ亜美のことを何も知らなかった。
もちろん今も知らないことばかりだが、あの時よりは知っているつもりだ。

そんな今なら、少しだけ自信を持って言えるのだ。


あの写真の女は、亜美であってもおかしくない、と。


千佳はさして気にも留めていないようだが、そこに新堂が居たのは決定的だった。

貴之がこの数ヶ月、自分の目で見て感じてきたことを信じるならば、これを偶然と呼ぶことは難しい。

とするならば、そこに千佳の父親である新垣太蔵も、何らかの理由で亜美に関係していると考える方が自然では無いのかーー。

無数に散らばるパズルのピースを組み立てるように、貴之は少しずつではあるが、真実に一歩ずつ近づこうとしていた。
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