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セイドレイ【完結】
第31章 少女の肖像
新堂は乱れたワイシャツの襟を正すと、部屋から出て行こうとする。

「待てっ…!!そもそも貴様っ…何しに今日ここへ来たんだっ…?ワシに用があったんじゃないのか……?」

雅彦が新堂のその背中を呼び止める。

「…はて。何だったかなぁ…用があるというか…『用済み』だと言うことが今分かったよ。そうだ。私はもうお前に用は無い……」

「何だ…と?貴様っ、もういっぺん言ってみろ!?」

「自分の犯した罪の重さも理解できずに、甘っちょろい戯言を抜かして居直る阿呆には用が無いと言ったんだ。所詮、お前の覚悟とはその程度のものだったんだろう?私を失望させた罪は重いぞ。…そもそも、お前の目的は何だったんだ?一体何の為にこんなことを始めたんだ?自分の身勝手な欲望の為だろう?違うのか?」

「……ぐっ…だがっ……ワシはっ…」

「前にも言ったが、口出しを拒むのなら最初からお前一人でやればよかったことだ。誰の力も借りずにな。今更もう、お前一人がどうにかなったところで責任など取れると思うか?お前の僅かな財産やその老いぼれた命など、誰一人として求めてなどおらん。自惚れるのもいい加減にしろ。皆が求めているのは、高崎亜美、あの少女の人生そのもの、ただそれだけだ。もう誰にも止められないんだよ」

完膚なきまでに言い負かされた雅彦は、ついにその口をつぐんでしまう。

「…雅彦よ、考え直せ。今なら私はお前を許す。さっきはもう用済みなどと言ったが……お前が考えを改めるのであれば、私はまだお前を必要とする。これは嘘じゃない。私にはお前の力が必要なんだ…。大丈夫、亜美はまだ生きているし、必ず戻って来る。…時が来ればな。だが私が何を知っているか…そんな野暮なことは聞くなよ?お前はここで、この屋敷で、ただその時を待っていればいい。いいか?それが今お前がすべきことだ。それがお前の責任なんだよ」


新堂はそう言い残し、部屋を出ていった。

雅彦は床に膝を落とし、ただ力無くその場に佇んでいた。

慎二はそんな父親の姿を、ただ黙って眺めているしか無かったーー。
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