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セイドレイ【完結】
第6章 破瓜
「あの~、さっそくなんですけど…」
「あら、どうしたの?遠慮しなくていいわよ~」
「…今夜、健一さんが帰ってきて、みなさんで食事することになってて…。それで私、これからここでお世話になるから、何か少しでもできることはないかな?って、そう思って…。もし内藤さんがよければ、夕飯の支度を私にも手伝わせてもらえないかと…」
「あらあらまあまあ、本当に良い子ねぇ。ここの男どもにそんな気を遣わなくていいのに!…でもそういうことなら、そうね。一緒にご馳走作っちゃう??」
「は…はいっ!ぜひ…お願いしますっ!」
「お安い御用よ~!なんだかいいわね、やっぱり。女の子は華があって愛らしくて。この家もパァっと明るくなるわ!じゃあこれから買い物に行ってくるから、ちょっと待っててちょうだいね~」
(…話しかけてみてよかった。じゃあその間に、荷解きのつづきをやっちゃおう)
亜美が部屋へ戻ろうと階段を昇る途中、2階の廊下になにやら人影が見えた。
(あれ…?もしかして…)
後ろ姿だったが、その巨漢に亜美は一瞬たじろぐ。
着古してダルダルになったスウェットパンツ。
まだ肌寒い季節だというのに、上半身は白いタンクトップのみという出で立ち。
よくよく目を凝らして見ると、それは汗染みなのか、ところどころ黄ばんでいるようだった。
露出した肩や腕には、遠目に見ても分かるほどに体毛が生え散らかしている。
その姿は、これまで亜美が関わったことのないタイプの人種だった。
(あれが…慎二さん…なの?)
人の容姿に差別や偏見など一切持たない亜美ですら、つい嫌悪感を抱いてしまいそうになるほど、その姿はあまりに清潔感がない。
(ちょっと意外だけど…でも、見た目で人を判断しちゃいけないよね…)
すると、亜美の存在に気づいたのか、後ろに振り向いた慎二と目が合ってしまった。
「あっ、あの…今日からお世話になる亜美ですっ!よろしくお願い…──」
慌てて挨拶する亜美を、舐め回すような視線で見つめる慎二。
その異様な目付きに、亜美は思わず息をのむ。
「──…しま…す」
尻すぼみになりながらも挨拶をした亜美を鼻で笑うかのように、慎二は無言で振り返ると、トイレへ入って行った。
(え…?なに…?私…なにかした…?やっぱり歓迎されてないのかな…──)