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セイドレイ【完結】
第6章 破瓜

「…じゃあ私そろそろ帰るけど、あとは亜美ちゃんにおまかせしていいかしら?」
「はいっ。いろいろありがとうございました…」
「院長たちが帰ってきたら、火を入れるものだけ温めてね。亜美ちゃんが手伝ってくれたから、おばさん、捗っちゃったわ」
「とんでもないです…またちょくちょくお手伝いさせてくださいね」
「本当に素直でいい子ねぇ…私すっかり気に入っちゃった!もう、うちの娘とは本当に大違いよ~」
(やっぱり…ママがいるってうらやましいな…)
内藤を見送ると、亜美は雅彦と健一の帰りを待った。
雅彦は午前の診察を終えたあと用事があるらしく、大体18時過ぎに帰宅するとのこと。
ダイニングテーブルに並べた料理を眺めながら、亜美は先ほど二階で見かけた慎二のことを考えていた。
( あの人と…これから一緒に暮らしていくんだよね…正直ちょっと怖いかも……)
そんな不安がよぎりつつ、人を見た目で判断してはダメだ、と自分に言い聞かせるように、亜美は首を左右に振る。
(とにかく最初が肝心だよね。みんな喜んでくれるといいな…)
その後、雅彦と健一がほぼ同時刻に帰宅。
「君が亜美ちゃん?健一です。よろしく~」
「あ、きょ、今日からお世話になりますっ。亜美です…。よろしくお願いします…!」
(この人が健一さん…。慎二さんよりは話しやすそう)
健一は、見た目こそ慎二の面影があるものの、やや清潔感は感じられた。
なにより雰囲気が、慎二と違って明るい。
それにしてもこの家の男たちはみな、雅彦の血を引いたのか大柄だ。
慎二よりは取っ付きやすいとはいえ、若干の抵抗はある。
「今日はお祝いだから、ちょっと良いアイスワインを買ってきたぞ。亜美はまだ未成年だから、ノンアルのシャンメリーだ。後で飲もう」
雅彦はそう言って、買ってきたワインを冷蔵庫で冷やす。
(みんな…いいひと…──)
「てか晩飯、豪華じゃない?内藤のおばちゃん気合い入ってんな~」
「あ…実は私がお願いして、ちょっと手伝わせてもらったんです…」
「マジか?じゃあこれ亜美ちゃんが作ったの?すげーうまそー!あ、そういや…あいつは?」
あいつ、とは、慎二のことだろうか。
「ったく…相変わらず引きこもってんのかよ。こんな日くらい一緒に食えばいいのに…」

