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セイドレイ【完結】
第32章 漂泊
「こっ……こんな感じでいいかな…?ごごごめんねっ…下手くそで……」
鏡に写った自分の顔をまじまじと見つめる。
毛先を切っただけだが、ほんの少しだけ気持ちが軽くなる。
亜美にとってそれは、ささやかではあるが変化に違いないからだ。
アパートとマンションを往復するだけの日々。
寝て、食べて、セックスをする三大欲求のみの生活。
案外、それらが満たされていれば、人は生きていけるのだろうということか。
「さてっ…じゃあそろそろ…寝よっか?」
「……はい」
8畳のワンルームに敷かれた布団。
亜美と田中は、この小さな布団に身を寄せて眠る。
眠る前、亜美は両手両足を拘束される。
もちろん、首の鎖は繋がれたままだ。
田中は服を脱ぎ何故かいつも全裸になる。
つい先程亜美のアナルと口に2発の射精をしたというのに、その股間に生えている肉棒を固くしたまま布団に入ると、亜美を抱き締めるように腕を回して眠りにつく。
「おやすみ……亜美ちゃん………」
こうして、亜美の一日はようやく終わりを迎える。
明日の客は3人か、それとも5人か。
そんなことはもう、どうでもよかった。
目を閉じると、その日その日で浮かぶ顔があった。
今日は髪を切ったからか、まず母親が出てきた。
そしてどんな日も、最後に必ず浮かんでくる顔がある。
雅彦だ。
亜美の人生を滅茶苦茶にした、その諸悪の根源。
もちろん許すはずも無い、許せるはずも無い。
だが何故だろう。
囚われの身となってから、亜美はどこか雅彦が恋しかった。
ある時期から、雅彦と寝床を共にしていたからだろうか。
太く逞しい腕の中で胸毛を擦りながら、雅彦の股間が固くなることを毎日望んでいたあの頃。
毎夜、雅彦の寝室を訪れては、避妊薬を口移しで飲まされていた。
その時、いつもカラダの奥が熱く疼くのを感じていた。
今、同じように田中の腕に抱かれて眠っていても、あの感覚になることは無い。
自分をレイプした男のことなどを愛したつもりは一度もない。
だが、雅彦はどうだったのだろう。
そして今、どうしているのだろう。
同じように、亜美を恋しく思いながら、同じ夜の闇に飲まれているのだろうか。
「おとう………さ……」
亜美は、小さくそう呼びかけたまま、ようやく眠りについた。
鏡に写った自分の顔をまじまじと見つめる。
毛先を切っただけだが、ほんの少しだけ気持ちが軽くなる。
亜美にとってそれは、ささやかではあるが変化に違いないからだ。
アパートとマンションを往復するだけの日々。
寝て、食べて、セックスをする三大欲求のみの生活。
案外、それらが満たされていれば、人は生きていけるのだろうということか。
「さてっ…じゃあそろそろ…寝よっか?」
「……はい」
8畳のワンルームに敷かれた布団。
亜美と田中は、この小さな布団に身を寄せて眠る。
眠る前、亜美は両手両足を拘束される。
もちろん、首の鎖は繋がれたままだ。
田中は服を脱ぎ何故かいつも全裸になる。
つい先程亜美のアナルと口に2発の射精をしたというのに、その股間に生えている肉棒を固くしたまま布団に入ると、亜美を抱き締めるように腕を回して眠りにつく。
「おやすみ……亜美ちゃん………」
こうして、亜美の一日はようやく終わりを迎える。
明日の客は3人か、それとも5人か。
そんなことはもう、どうでもよかった。
目を閉じると、その日その日で浮かぶ顔があった。
今日は髪を切ったからか、まず母親が出てきた。
そしてどんな日も、最後に必ず浮かんでくる顔がある。
雅彦だ。
亜美の人生を滅茶苦茶にした、その諸悪の根源。
もちろん許すはずも無い、許せるはずも無い。
だが何故だろう。
囚われの身となってから、亜美はどこか雅彦が恋しかった。
ある時期から、雅彦と寝床を共にしていたからだろうか。
太く逞しい腕の中で胸毛を擦りながら、雅彦の股間が固くなることを毎日望んでいたあの頃。
毎夜、雅彦の寝室を訪れては、避妊薬を口移しで飲まされていた。
その時、いつもカラダの奥が熱く疼くのを感じていた。
今、同じように田中の腕に抱かれて眠っていても、あの感覚になることは無い。
自分をレイプした男のことなどを愛したつもりは一度もない。
だが、雅彦はどうだったのだろう。
そして今、どうしているのだろう。
同じように、亜美を恋しく思いながら、同じ夜の闇に飲まれているのだろうか。
「おとう………さ……」
亜美は、小さくそう呼びかけたまま、ようやく眠りについた。