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セイドレイ【完結】
第6章 破瓜
「…構わん。あいつが居ても飯が不味くなるだけだ。3人で始めようじゃないか」
「でも…いいんですか?私が呼んできましょうか…?」
「いーよ。あいつのことは気にしないで。呼んでも多分来ないからさ」
(そう…なんだ……)
慎二抜きで食卓を囲む3人。
最初こそぎこちなかったものの、次第に会話が弾んできたころ──。
「さて、そろそろ…」
雅彦は席を立ち、冷蔵庫にから買ってきたワインを取り出す。
「あ、私…おつぎしましょうか?」
「そんな気を遣わなくていい。今日は君が主役なんだから。座っていなさい」
「あ、はい…」
亜美のワイングラスに、シャンメリーが注がれる。
(わぁ…なんかオシャレ……)
「ではあらためて。今夜は亜美という家族が増えた記念すべき日だ。これからはワシらになんでも頼ってくれ。ただ喪中だから、乾杯はやめような」
場を仕切る雅彦の言葉に少し肩をすくめて、亜美はグラスを持った。
『…いただきます!』
(あれ…?なんかおかしい…急に眠気が…──)
亜美は突如、急激な眠気に襲われる。
「お?…そろそろ効いてき……────」
雅彦が何か言ってるが、亜美はその言葉を聞き終える前にテーブルに伏せるようにして、意識を失った──。
(あれ…?ここはどこ?私…なにしてたんだっけ…?)
『亜美、亜美~…──』
どこかから、自分を呼ぶ声がする。
(ママ…?)
遠くに、死んだはずの母がいる。
(やっぱりママだっ…!亜美だよ!ここにいるよ!)
しかし、亜美の声は母に届かない。
(ママ…誰と話して…──)
そこには、大きいお腹を抱えた母の姿があった。
(うそ…!なんでママ赤ちゃんいる…の…?)
腹の子をさすりながら、母は続ける。
『亜美、って名前にしようと思ってるの。いい名前でしょ?きっと素敵な女の子になるわ。亜美、私の亜美…──』
(あれは…私…?)
その時、母と目が合う。
(ママ!やっと気付いてくれた!亜美だよ!)
しかし、母は亜美の顔を見た途端、なぜか今まで見たことのないような哀しげな表情をする。
(ママ…?どうしてそんな顔するの…?)
母は亜美から目を逸らすと、そのまま吸い込まれるように光の中へ消えていく────。
(ママ…!待って!行かないでっ……────)