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セイドレイ【完結】
第34章 解放区
新堂は何故、知り得るはずの無い貴之がこのマンションを知っているのか、当然疑問に思った。

内通者が居るとしても、可能性が考えられるのは本山、田中、そして亜美の3人。

しかし、仮に3人がグルだとして、貴之と亜美を接触させることが目的であれば、わざわざこのマンションでは無く、田中のアパートに連れて行けばいい話だ。

よって、誰かの目撃情報によるものもしくは、貴之本人が偶然この辺りで亜美を見かけたか、そのどちらかだと推測した。

新堂は、この件に関して貴之をどう処理するか少し悩んだ。
というのも、このマンションに関してはその存在を知られたこと自体が厄介だったからだ。

貴之の行動にもよるが、もしかしたら雅彦達にマンションの所在を教えてしまうかもしれない。

新堂は少々頭を悩ませながらも、ただの偶然の可能性も視野に入れて連日様子を見ることにした。

その日以来、亜美については住居人用の裏口から出入りさせるようにして、マンション付近に貴之が居るかどうかを注視していたのだが、案の定、貴之はそれからほぼ毎日のようにマンションに訪れていたのだった。

やはり、ここに亜美が居ることを知っている。
せっかく亜美から遠ざけてやったのに、自らまた近づいてくるとは。
また言いがかりをつけて退学させてやってもいいなどと考えていたころ、思わぬ者からの提案があった。

それは、亜美本人からだった。
そう、今回のことを考えたのは、亜美だったのだ。

きっと中途半端な別れ方をしたから、諦めきれないのだろう。
貴之の気持ちをそう察した亜美は、下手に隠すのでは無く、ありのままを見せることによって、貴之に今度こそ本当に嫌われることを自ら望んだのである。

それしかもう貴之を守る術が残されていないと、亜美は思ったのだった。

後は、それを実行に移すにあたっての細かなシナリオは、新堂と酒井を中心に、より悲劇のストーリーに仕立てあげられた。

そして今日、その時が来た。

今日もまたマンション付近に現れていた貴之の元へ亜美が接触を図り、その後近くの公園へ移動する。

万が一逃げ出さないために、本山がそれを監視する役目を与えられた。

後は、先程あったやり取りの通りだった。

亜美の望み通り、貴之がもうここへ訪れることは無いであろう。
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