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セイドレイ【完結】
第35章 空蝉

「あのっ……さ、ちょっと確認したいことが…あるんだけどっ」
千佳がやや緊張した声で言う。
「…ん?なんだ?あ!もしかして俺が頼んだやつの方が良かった??ごめんごめん、それなら半分こしよーぜ!」
「………いや、そうじゃなくて…」
貴之の鈍感さが嫌になる。
しかし、そこが愛おしくも感じる。
「…あのね、もっかいちゃんと言うね。私は水野君のことが好き。だから私と付き合って欲しいんだけど……だめ?」
「あ……………」
ポカンと口を開いたまま、硬直する貴之。
「(やっぱり…私じゃだめなのかな……)」
「……………分かった。いいよ」
「……へ?」
「付き合う。付き合お。よろしくお願いします」
「ちょっ…ちょっと待って!?本当に??どうしたのっ!??」
「どうしたの、って…そっちが告ってきたんだろ…だから……俺も…千佳が好き。だから付き合う。以上!なんか問題あるか?」
「え~??うっそ…えっ?えええええ???!!」
「…おい。あんまおっきな声出すなよ…変な目で見られてるぞ」
『おまちどうさまです』
ちょうどそんなタイミングで、カフェのスタッフがフードを運んできた。
「うわ~うまそー!じゃ、食うか。いただきまっす!ほら、千佳も食べよ?」
「…うん…いただきっ…ますっ……うぅ…」
「ちょ…何で泣いてんだよ??俺が泣かしたみたいじゃんか……」
「うっ…ご、ごめぇん………食べる、食べます……」
「…あ、それからさぁ…俺のことは『貴之』でいいからさ。よろしくな」
「う…うん、分かった…貴之…」
こうして二人は、正式に付き合うこととなった。
千佳からしてみれば、半ば諦めていた願いがようやく日の目を浴びたのだ。
涙が出るほど嬉しかったのだろう。
亜美のことはもう過去なのだ。
貴之の中で『けじめ』がついたのだろう、そう思った。
一方、千佳との交際を受け入れた貴之の心情は、どうなのか。
亜美と別れてこの2ヶ月の間に、千佳に惹かれたのだろうか。
貴之本人も、実のところ良く分かっていなかった。
千佳のことは好きだし、自分に好意を抱いてくれていることは素直に嬉しい。
しかし、『好き』という感情を考えた時、どうしても亜美と比較してしまう。
貴之は思った。
もしかしたら亜美に対して抱いて感情の方が、間違いだったのかもしれない、と。
千佳がやや緊張した声で言う。
「…ん?なんだ?あ!もしかして俺が頼んだやつの方が良かった??ごめんごめん、それなら半分こしよーぜ!」
「………いや、そうじゃなくて…」
貴之の鈍感さが嫌になる。
しかし、そこが愛おしくも感じる。
「…あのね、もっかいちゃんと言うね。私は水野君のことが好き。だから私と付き合って欲しいんだけど……だめ?」
「あ……………」
ポカンと口を開いたまま、硬直する貴之。
「(やっぱり…私じゃだめなのかな……)」
「……………分かった。いいよ」
「……へ?」
「付き合う。付き合お。よろしくお願いします」
「ちょっ…ちょっと待って!?本当に??どうしたのっ!??」
「どうしたの、って…そっちが告ってきたんだろ…だから……俺も…千佳が好き。だから付き合う。以上!なんか問題あるか?」
「え~??うっそ…えっ?えええええ???!!」
「…おい。あんまおっきな声出すなよ…変な目で見られてるぞ」
『おまちどうさまです』
ちょうどそんなタイミングで、カフェのスタッフがフードを運んできた。
「うわ~うまそー!じゃ、食うか。いただきまっす!ほら、千佳も食べよ?」
「…うん…いただきっ…ますっ……うぅ…」
「ちょ…何で泣いてんだよ??俺が泣かしたみたいじゃんか……」
「うっ…ご、ごめぇん………食べる、食べます……」
「…あ、それからさぁ…俺のことは『貴之』でいいからさ。よろしくな」
「う…うん、分かった…貴之…」
こうして二人は、正式に付き合うこととなった。
千佳からしてみれば、半ば諦めていた願いがようやく日の目を浴びたのだ。
涙が出るほど嬉しかったのだろう。
亜美のことはもう過去なのだ。
貴之の中で『けじめ』がついたのだろう、そう思った。
一方、千佳との交際を受け入れた貴之の心情は、どうなのか。
亜美と別れてこの2ヶ月の間に、千佳に惹かれたのだろうか。
貴之本人も、実のところ良く分かっていなかった。
千佳のことは好きだし、自分に好意を抱いてくれていることは素直に嬉しい。
しかし、『好き』という感情を考えた時、どうしても亜美と比較してしまう。
貴之は思った。
もしかしたら亜美に対して抱いて感情の方が、間違いだったのかもしれない、と。

