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セイドレイ【完結】
第35章 空蝉
「こっ…こんなとこで…するの?」

「……そうだよ。だって場所無いしな」

「そっ…そうだけどっ…でも……」

貴之と千佳は、本屋の男子トイレの個室に入っていた。
ここはよく、亜美とセックスするために使用していた場所だ。

「…したいって言ったのは千佳だろ…?俺ん家も千佳ん家も無理なら…ここしか無いじゃん」

「…でもっ…こんなとこ…もし人が来たりしたらっ…私…怖いよぉ……」

怖い、か。
普通の女子は、本屋の男子トイレの個室でセックスするのは怖いということか、と貴之は思う。


「それにっ…私はじめて……だし。もうちょっと雰囲気とか……綺麗な場所がいいな……わ、私お金ちょっと多めに出すからっ…ホテル行かない…?」

「…嫌なの?俺とすんの」

「ちっ…違うよっ!全然…そうじゃなくてっ…それに…ほら…こっ、コンドームとかも…無いし……」


言われてみればそうだ。
普通の高校生カップルは、避妊具を装着してセックスするのだ。


「た、貴之…?さっきからなんかちょっと…怖いよ?もっと普通に…いつもみたいに喋ってよ……」

「…普通?俺は別に普通だよ」

しかし、そう言った貴之の表情は、千佳が知る貴之では無かった。
さっきまで見せていた子犬のような笑顔とはまるで正反対の、すさんだ目をした男ーー。

千佳は思わず息を飲む。

「……ご、ごめん。私が急に…したいなんて無理言っちゃったから…ま、また今度にしない?今日はもう…帰ろ……んっ??んんっ!!」

すると貴之はその言葉を遮るようにして、強引に千佳の唇を奪う。
貪るような、野性味の強いディープキス。
こうして千佳のファーストキスは、たった今貴之によって奪われた。

「んんんん…!んっあっ……た、貴之…?お願いっ…やめてっ…」

「……俺のこと好きか?」

「…え?きゅ、急にどうしたの?好きだよ…でも、好きだから…もっと大事にしたいっていうか……ねぇ?今日はもう帰ろうよ…」

「大事に…か」

貴之はそう小さく呟くと、千佳からほんの少し後ずさり距離を空けた。

「……貴之?ちょっと何やって……きゃっ!!??」

千佳が思わず、短い悲鳴を上げて目を覆う。

その視線の先には、ズボンを下ろした貴之が、勃起した肉棒を露出していたのだった。

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