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セイドレイ【完結】
第37章 零落
では、これから病院はどうなってしまうのか。

病院名の変更、加えて建屋の改築と、医療設備を刷新して、武田クリニックは新しく生まれ変わることになる。

雅彦に関しては従来通り、院長として従事する。
経営者から雇われの身へ。
新たな経営者から、働いた分の賃金が雅彦に支払われるという。
しかし、雅彦も御歳60。
いつ引退してもおかしくは無いため、継承者を据えておく必要がある。
現時点ではまだ未定だが、武田家の長男である健一が院長を世襲する可能性が低くなるのは明らかだ。
経営に関する全ての決定権は当然次の経営者にある為、他から継承者を引っ張って来るということになれば、健一はその座を奪われることになる。

また、住居に関しても基本的には引き続き住まうことはできるのだが、これも病院と同じで、新しい所有者の一存で増築、改築、場合によっては解体されても文句は言えないということだった。

新堂は、以上の条件を雅彦が全て受け入れるというならば、即日にでも亜美を連れて来る用意があると、電話口で伝えてきたのだった。

つまりは亜美と引き換えに、雅彦の財産を全て奪い取る。
これこそが、新堂が雅彦に科そうとした制裁だったのだ。

当然、二つ返事という訳にはいかず、雅彦は迷いに迷った。
どのみち、病院の経営は時間の問題だ。
仮に今のまま健一に継承したところで、決して少なくは無い借金を背負わせるだけだ。
そして、慎二の存在もある。
息子達に下手なものを遺すよりも、綺麗に手放してしまった方が良いとも考えることもできた。

そして何より、亜美の存在だ。
この約半年の間、全てを投げ打ってでも亜美を取り返したいとさえ思っていたのだ。

雅彦は新堂に問うた。
もし、今回の件を拒否したら、亜美はどうなるのか、と。

新堂はそれに対し、こう答えた。

『お前が拒否さえしなければ、これからも亜美の傍に居られるぞ』

と。

新堂は、拒否した場合の答えなど用意していなかったのだ。

そして雅彦は決断する。

冷静さを失っていたかもしれない。
大馬鹿者だと笑われるかもしれない。

しかし、亜美の傍に居られるなら。
たとえ自分のものにはならなくても、残り少ない人生を、愛した女の傍で終えることができるのならーー。

『…分かった。新堂、お前の好きにしていい。だからできるだけ早く亜美に会わせてくれーー』
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