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セイドレイ【完結】
第39章 分水嶺

VTR明けにアナウンサーがそう言って、特集は終了した。
今後も引き続き密着ということは、リニューアルオープンするまではシリーズ化されるのであろう。
貴之がテレビ向かって複雑な表情を浮かべていると、上司が思わぬことを口にした。
「武田さんとこの庭は、昔からうちが手入れしてたんだよ。最近は頼まれなくなったけどなぁ~」
「そっ…そうなんですかっ?」
「おう。先代の院長と俺の親父が古くから付き合いがあってな。まぁ近頃は金が無いのか、ピタりと仕事くれなくなったけどな。でもリニューアルするってぇことは、やっぱ儲かってんのかねぇ」
運命とは、こういうことを言うのだろうか。
亜美と別れ、学校も辞め、ようやく新しい生活が軌道に乗り始めたと思っていた矢先に、思わぬ形でまた亜美のことを思い出す羽目になった。
亜美のことを忘れたわけでは無かったが、意識的に考えないようにしていた貴之にとって、このことはまるで通り魔に襲われたような感覚だった。
嫌でも亜美の姿が目に浮かぶ。
最後に目にした、あの姿がーー。
亜美はあれから、一体どうなったのだろう。
そして今、どこに居るのだろう。
ひとたび考え始めると、それは洪水のように貴之の頭の中を駆け巡る。
…いけない。
もう過去のことではないか。
貴之は首を左右に振り、そう自分に言い聞かせ事務所を後にした。
職場へは自転車で通っている。
駐輪場で自転車の鍵を開けていると、背後から声がした。
「お~い、お疲れ!」
声の主は、職場の先輩の村尾だった。
職場の中では貴之に一番歳が近く、何かと世話を焼いて気にかけてくれている。
とは言え、年齢は貴之より一回り上の28歳なのだが、村尾にとって貴之は、念願の可愛い後輩なのだろう。
「お、お疲れ様です…!今日も暑かったっすね…」
「まじで今年やべーよな。そうそう、お前今から暇か?なんならメシでも行かねぇ?奢ってやっからさ」
「…い、いいんですか…?そんじゃ、お言葉に甘えて…」
一人で居ても余計なことを考えてしまうだけだと思った貴之は、村尾からの誘いを快諾した。
今後も引き続き密着ということは、リニューアルオープンするまではシリーズ化されるのであろう。
貴之がテレビ向かって複雑な表情を浮かべていると、上司が思わぬことを口にした。
「武田さんとこの庭は、昔からうちが手入れしてたんだよ。最近は頼まれなくなったけどなぁ~」
「そっ…そうなんですかっ?」
「おう。先代の院長と俺の親父が古くから付き合いがあってな。まぁ近頃は金が無いのか、ピタりと仕事くれなくなったけどな。でもリニューアルするってぇことは、やっぱ儲かってんのかねぇ」
運命とは、こういうことを言うのだろうか。
亜美と別れ、学校も辞め、ようやく新しい生活が軌道に乗り始めたと思っていた矢先に、思わぬ形でまた亜美のことを思い出す羽目になった。
亜美のことを忘れたわけでは無かったが、意識的に考えないようにしていた貴之にとって、このことはまるで通り魔に襲われたような感覚だった。
嫌でも亜美の姿が目に浮かぶ。
最後に目にした、あの姿がーー。
亜美はあれから、一体どうなったのだろう。
そして今、どこに居るのだろう。
ひとたび考え始めると、それは洪水のように貴之の頭の中を駆け巡る。
…いけない。
もう過去のことではないか。
貴之は首を左右に振り、そう自分に言い聞かせ事務所を後にした。
職場へは自転車で通っている。
駐輪場で自転車の鍵を開けていると、背後から声がした。
「お~い、お疲れ!」
声の主は、職場の先輩の村尾だった。
職場の中では貴之に一番歳が近く、何かと世話を焼いて気にかけてくれている。
とは言え、年齢は貴之より一回り上の28歳なのだが、村尾にとって貴之は、念願の可愛い後輩なのだろう。
「お、お疲れ様です…!今日も暑かったっすね…」
「まじで今年やべーよな。そうそう、お前今から暇か?なんならメシでも行かねぇ?奢ってやっからさ」
「…い、いいんですか…?そんじゃ、お言葉に甘えて…」
一人で居ても余計なことを考えてしまうだけだと思った貴之は、村尾からの誘いを快諾した。

