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セイドレイ【完結】
第39章 分水嶺
「えっ…あっ……えっと……」

突然の出来事に戸惑う貴之。

「…お仕事帰りです?毎日暑いですよね~。ってかお兄さん、すっごく若く見えるんだけどっ…!おいくつなんです…?」

「えっと…あのっ……そのっ……」

正直に言うべきなのか、誤魔化すべきなのか。
貴之は言葉を詰まらせ、硬直してしまう。

「…お兄さん、もしかしてこゆとこはじめて…?」

「…は、はいっ……はじめて…です」

「そぉなんだ!緊張してる?…カワイイ。あ、これ似合ってるかな?制服とか好きなの??」

あすかはそう言って、少しはだけたブラウスから胸元をチラつかせる。

「(だ、ダメだっ………)」

貴之が戸惑う理由は、この状況の他に、もうひとつあった。

それは、あすかの容姿が、嫌でも亜美の面影と重なるからだ。

決して顔は似ていないのだが、黒髪と制服というアイコンと、全体の雰囲気がそうさせていた。

「…何か分からないこととかある?」

あすかが貴之に尋ねる。

「あっ…あのっ……あすかさんは……女子高生…なの?」

貴之のその言葉に、あすかは一瞬呆気に取られたような顔をした後、声をあげて笑いだした。

「あははっ…!無い無い、んなわけ無いじゃん!もぉ、お兄さんウケるんですけどー。残念ながら、あたしは成人してますよん。この制服、お兄さんが頼んだコスプレのオプションだよ??あ、それとももうそういうプレイが始まってたのか…だとしたらごめんなさいっ。あー、またやらかしちゃったかも…てへ」

「お、オプション……」

村尾の趣味か、と、それについては一瞬で理解ができた。

「…おいくつ…なんです?」

「…あたし?うーん…あんまし言いたくないけど、お兄さん良い人そうだし…ま、いっか。本当は22。お店のパネルには19で出してるけどね。…内緒だよ?」

「そっ…そうなんですか……全然、俺と同じくらいに見えたんで…」

「…ってことは、22よりは若いってことかな?お兄さんはいくつなの?」

「じゅ、じゅう……ろく」

「…へ?」

「16歳…です……」

「…マジか。聞かなかったことにして……いいかな?」

「…はい。なんかすんません……」

「もしかして、童貞?」

「…い、いや…一応……したことはあります」

「……そっか。で、今日はどうしてここへ来たの…?」
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