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セイドレイ【完結】
第40章 蚊帳の外の景色
所は変わって、区内のとあるドレスショップ。
「あら…これもステキっ。どうしよ~う、迷っちゃうわぁ~」
何着も並べられたウェディングドレスの前で、一人の女性が色めき立っている。
「…う~ん、でもやっぱり一生に一度のことだし、オーダーメイドにした方がいいかしら…ねぇ、健一さん?どう思う?ねぇ、健一さんってば!」
「……え?あっ…う、うん。良く似合ってると…思うよ…」
「そうじゃなくて!…も~う、ちっとも人の話聞いてないんだから…」
城島律子、40歳。
この辺りでは名の知れた大手不動産会社、城島グループの令嬢であり、健一の結婚相手となる女だ。
現在、城島不動産は律子の兄に当たる城島秀典が代表を務めているのだが、その秀典が亜美の客の内の一人である。
当然、律子はまさか自分の兄が、多額の金を払い16歳の少女にえげつない暴行を働いている会員制クラブの一員であること、そして自社がそんな極悪ビジネスの隠れ蓑になっていることなど知る由もない。
彼女はただ、兄の知人である新堂という男から紹介された、10歳年下の医者との結婚に向けて浮かれているだけなのだ。
律子がその歳まで婚期を逃していたのは様々な理由がありそうだが、少なくとも…その容姿に関しては、健一の好みとはかけ離れていた。
亜美と比較してもしょうがないことは分かっている。
見た目だけで言えば、健一だって到底亜美とは釣り合わないのだ。
だが、健一は自分のことを棚に上げたとしても…律子の見た目に関して、好感触を抱く要素が一切見当たらなかった。
更に、共に過ごしていると日々実感するのが、律子のプライドの高さだ。
社長令嬢として裕福な家庭に生まれ、何ひとつ不自由なく育ったのであろう。
自分は特別である、という傲慢さが言動の端々から見て取れた。
似たような環境に生まれても、皆が皆そうなる訳では無い。
律子の性格は、本人の元々の性質に加え、不幸なことにそれを指摘してくれる人間が、親を含めて周囲に居なかったことに尽きる。
若ければまだ取り返しもつくが、40歳までこのように生きてきてしまったからには、余程のことがない限り改善されることは無いだろう。
「…もぅ、この人ったら最近、何を聞いても上の空って感じで」
ドレスショップのスタッフに律子が愚痴を言うと、型通りの愛想笑いが返されていた。
「あら…これもステキっ。どうしよ~う、迷っちゃうわぁ~」
何着も並べられたウェディングドレスの前で、一人の女性が色めき立っている。
「…う~ん、でもやっぱり一生に一度のことだし、オーダーメイドにした方がいいかしら…ねぇ、健一さん?どう思う?ねぇ、健一さんってば!」
「……え?あっ…う、うん。良く似合ってると…思うよ…」
「そうじゃなくて!…も~う、ちっとも人の話聞いてないんだから…」
城島律子、40歳。
この辺りでは名の知れた大手不動産会社、城島グループの令嬢であり、健一の結婚相手となる女だ。
現在、城島不動産は律子の兄に当たる城島秀典が代表を務めているのだが、その秀典が亜美の客の内の一人である。
当然、律子はまさか自分の兄が、多額の金を払い16歳の少女にえげつない暴行を働いている会員制クラブの一員であること、そして自社がそんな極悪ビジネスの隠れ蓑になっていることなど知る由もない。
彼女はただ、兄の知人である新堂という男から紹介された、10歳年下の医者との結婚に向けて浮かれているだけなのだ。
律子がその歳まで婚期を逃していたのは様々な理由がありそうだが、少なくとも…その容姿に関しては、健一の好みとはかけ離れていた。
亜美と比較してもしょうがないことは分かっている。
見た目だけで言えば、健一だって到底亜美とは釣り合わないのだ。
だが、健一は自分のことを棚に上げたとしても…律子の見た目に関して、好感触を抱く要素が一切見当たらなかった。
更に、共に過ごしていると日々実感するのが、律子のプライドの高さだ。
社長令嬢として裕福な家庭に生まれ、何ひとつ不自由なく育ったのであろう。
自分は特別である、という傲慢さが言動の端々から見て取れた。
似たような環境に生まれても、皆が皆そうなる訳では無い。
律子の性格は、本人の元々の性質に加え、不幸なことにそれを指摘してくれる人間が、親を含めて周囲に居なかったことに尽きる。
若ければまだ取り返しもつくが、40歳までこのように生きてきてしまったからには、余程のことがない限り改善されることは無いだろう。
「…もぅ、この人ったら最近、何を聞いても上の空って感じで」
ドレスショップのスタッフに律子が愚痴を言うと、型通りの愛想笑いが返されていた。