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セイドレイ【完結】
第40章 蚊帳の外の景色
二人の結婚へ向けたあるゆる事柄は、急ピッチで進んでいた。
もちろんそれらは全て律子の主導であり、一応健一にもお伺いは立てられるものの、意見が採用されることは無い。
いや、むしろ健一に意見など無かった。
あるとすれば、今すぐこの婚約を解消したい、それだけだった。
結婚式関係のことに加え、新婚旅行や新居のことも考えなければいけない。
中途半端に意見を求められるなら、いっそのこと全て律子一人で勝手に決めて欲しかった。
しかし、それは律子のプライドが許さないだろう。
あくまで求婚を申し込んだのは健一だ、という設定の元に二人の関係は成立していた。
健一はお見合い結婚自体を否定するつもりも、歳上女房を貰い受けることに抵抗があるわけでも無い。
健一の父、雅彦もまたお見合い結婚であった。
過去を振り返ると円満な家庭だったかどうかは不明だが、それでもある時点までは家族としての体を成していたように思う。
健一も一度は、この結婚を前向きに考えようとしたこともあったが、それはあまりにも現実味が無かった。
ただただ、どうしてこうなってしまったのか…という、もう後戻りできない現実を受け入れられなかった。
一方、律子の方は、10歳年下の医者に求婚されたことで大層気分を良くしていた。
健一の容姿に関しては特別好みでは無いし他人に見せびらかしたくなるものでは無いのだが、それでも医者という肩書きは彼女の自尊心を満たすには十分だった。
これまで、幾度もお見合いをしてきたのだが、紹介される相手はどれも社会的地位こそそれなりにあっても、自分よりも一回り程上の熟年男性ばかりであり、律子はそれが気に入らなかった。
もちろん妥協する必要は無いのだが、自分にはもっと相応しい相手が居る、と信じて疑わなかったのだ。
そんな彼女も若い頃は、自由恋愛を楽しんでいた時期もある。
その中には婚約まで漕ぎ着けた相手も居たのだが、彼女のプライドの高さや傲慢さが災いし、破談となってしまった。
気づけば40代に突入し、彼女がより一層価値観を拗らせていたその時、10歳年下の医者である健一から求婚されたのだ。
健一のステータスに関して、完全に納得していた訳では無い。
彼女にとって健一との結婚は、人生で初めて覚えた「妥協」だったのかもしれない。
もちろんそれらは全て律子の主導であり、一応健一にもお伺いは立てられるものの、意見が採用されることは無い。
いや、むしろ健一に意見など無かった。
あるとすれば、今すぐこの婚約を解消したい、それだけだった。
結婚式関係のことに加え、新婚旅行や新居のことも考えなければいけない。
中途半端に意見を求められるなら、いっそのこと全て律子一人で勝手に決めて欲しかった。
しかし、それは律子のプライドが許さないだろう。
あくまで求婚を申し込んだのは健一だ、という設定の元に二人の関係は成立していた。
健一はお見合い結婚自体を否定するつもりも、歳上女房を貰い受けることに抵抗があるわけでも無い。
健一の父、雅彦もまたお見合い結婚であった。
過去を振り返ると円満な家庭だったかどうかは不明だが、それでもある時点までは家族としての体を成していたように思う。
健一も一度は、この結婚を前向きに考えようとしたこともあったが、それはあまりにも現実味が無かった。
ただただ、どうしてこうなってしまったのか…という、もう後戻りできない現実を受け入れられなかった。
一方、律子の方は、10歳年下の医者に求婚されたことで大層気分を良くしていた。
健一の容姿に関しては特別好みでは無いし他人に見せびらかしたくなるものでは無いのだが、それでも医者という肩書きは彼女の自尊心を満たすには十分だった。
これまで、幾度もお見合いをしてきたのだが、紹介される相手はどれも社会的地位こそそれなりにあっても、自分よりも一回り程上の熟年男性ばかりであり、律子はそれが気に入らなかった。
もちろん妥協する必要は無いのだが、自分にはもっと相応しい相手が居る、と信じて疑わなかったのだ。
そんな彼女も若い頃は、自由恋愛を楽しんでいた時期もある。
その中には婚約まで漕ぎ着けた相手も居たのだが、彼女のプライドの高さや傲慢さが災いし、破談となってしまった。
気づけば40代に突入し、彼女がより一層価値観を拗らせていたその時、10歳年下の医者である健一から求婚されたのだ。
健一のステータスに関して、完全に納得していた訳では無い。
彼女にとって健一との結婚は、人生で初めて覚えた「妥協」だったのかもしれない。